広島市内で親がわが子に暴力を振るう事件が、今年に入って相次ぎ発覚している。4日には東区で、2歳児への傷害致死の疑いで父親(23)が逮捕された。児童虐待の相談件数は高水準で推移している。なぜ暴力をふるってしまうのか。どうすれば防げるのだろうか。 南区では1月、3歳男児の手足や口に粘着テープを巻き付けたとして、母親と祖父が暴行の疑いで逮捕された。安佐北区では男児を数回にわたり投げ落とした事案も判明。県警などによると「言うことを聞かない」「しつけのため」などと供述したという。 県内の児童相談所への相談件数は過去最多を更新している。2023年度の6380件のうち、子どもの心にダメージを負わせる心理的虐待が1841件と最多。身体的虐待が959件と続く。 児童相談所での勤務経験もある広島文教大の清水克之准教授は「子育てに暴力は必要ない」と強調する。ただ、手を上げてしまう親については「なぜ自分の気持ちを分かってくれないのかと、怒りや悲しみを正当化する傾向にある」と説明。「子どもは年齢や性格に応じてできないことがある。そこに考えが及んでいない」と分析する。 虐待死亡事案で県の検証委員長を務めた広島大大学院の七木田敦教授は虐待する親の背景を「貧困や仕事の待遇がよくないことで、いらいらを募らせていることも考えられる」と話す。事件を繰り返さないためには「子どもの生育歴や親の経済的な状況、公的機関の対応などを入念に確認すべきだ」と訴える。 家庭の密室化を危惧する声もある。親子の心理に詳しい安田女子大の小畠由香准教授は「何げない声掛けでもいい。格式張った介入ではなく、社会として子育てしていく意識を醸成していきたい」と強調している。