取り調べの録音・録画問題…本当に必要なのは、検察ではなく警察だ【「表と裏」の法律知識】

【「表と裏」の法律知識】#274 取調室で温かいカツ丼を食べさせてもらった被疑者が感涙し、ぽろりと真実を漏らすシーン。昭和のドラマではよくありました。しかし現実は、そんな人情味あふれる場面ばかりではありません。 被疑者を「ガキだよね」「お子ちゃま」などと侮辱する検察官、「検察なめんな」と恫喝して特別公務員暴行陵虐罪で告発される検察官など、最近では検察官による不適正な取り調べが相次いで表面化し、社会の信頼を大きく揺るがしています。 そこで最高検察庁が4月から導入するのが、在宅捜査事件への取り調べ録音・録画の拡大です。逮捕されず、自宅から捜査を受けに検察庁に来る被疑者についても、重要な供述が予想される場合や、取り調べの進め方が争点となりそうなケースを対象に録音・録画を試験的に始めるようです。 裁判員裁判の導入以降、逮捕・勾留された容疑者については録音・録画が一般的になり、現在では義務付けられていない事件でも9割以上で録音・録画が実施されています。 一方で、在宅事件の取り調べは見えない領域とされてきました。逮捕された後に私たちが弁護人の依頼を受けるケースでも、逮捕前に何度も何度も捜査機関に呼び付けられ、自白を取られてしまっているというケースも少なくありません。ですから、今回の最高検察庁の決断は一歩前進といえます。 ただ本当に録音・録画が必要なのは、検察ではなく警察だと思います。ひどい取り調べが行われたと依頼者から訴えを聞くことが多いのは、圧倒的に警察官の取り調べです。取調室は密室なので、怒鳴っても侮辱しても、「そんなことはしていない」と後で言い逃れができてしまいます。 可視化の拡大は、その「言った、言わない」のトラブルを防ぐためのまさに現代的な対応策なのです。 皆さんも、いつ犯罪という災難や冤罪事件に巻き込まれるか分かりません。突然、警察などから呼び付けられ、取り調べを受ける際は弁護士などに相談し、録音・録画問題がどうなっているのか、真っ先に確認してほしいと思います。 (髙橋裕樹/弁護士)

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