増え続ける「ユーチューバー被告」…「公益のため」の言い分は通るのか [韓国記者コラム]

【03月23日 KOREA WAVE】「被告人の職業は?」 「ユーチューバーです」 法廷では、本格的な審理に入る前に「認定尋問」という手続きがある。これは、出廷した被告が起訴状に記載された人物と同一人物であるかを確認するためのものだ。名前、生年月日、職業、住所、本籍などが順に尋ねられる。 最近は、ユーチューブチャンネルの運営を本業とする人が増え、「ユーチューバー」という職業を答える被告人を法廷で見かけることが珍しくない。年齢や職業のバックグラウンドはさまざまだが、彼らには共通している点がある。それは、初めて法の審判台に立つ時に決まって口にする言葉だ。 「公益の実現のために」 多くの場合、これらのユーチューバーは特定人物への名誉毀損容疑で起訴される。彼らは「国民の知る権利」という名目で、自らの行為が公益に資するものであると主張し、無罪を訴える。 たとえば、韓国の放送通信委員会の委員長候補であるイ・ジンスク氏の「2003年のイラク戦争時に従軍記者として活動した」という経歴に関して、政治・時事系のユーチューバーらが「虚偽だ」との疑惑を提起した。だが司法当局はイ・ジンスク氏が当時、MBC所属の記者としてバグダッドで取材活動をしていたことを確認し、ユーチューバーらに名誉毀損の罪でそれぞれ100万ウォンの罰金刑を言い渡した。 だがユーチューバーは控訴し、今月18日に開かれた控訴審初公判で「イ・ジンスク氏が記者引退後、政界や公職に進出することに問題があるのではないかと疑問を呈したものだ」と主張した。 韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の逮捕状発付に反対したソウル西部地裁での騒動の際、5階まで侵入し現場を中継した極右系ユーチューバーも同様だ。 今月17日に開かれた初公判で、このユーチューバーは「令状発付への抗議目的ではなく、現場の状況を国民に伝えるためだった」と釈明している。 さらに、20年前の集団性暴行事件の加害者に対して私的制裁を加えた疑いで検察の捜査を受けている登録者42万人のユーチューバーも、自身のチャンネルを「公益目的」と紹介している。 被害者側はこうしたユーチューバーを次のように呼んでいる。 「サイバーレッカー」 特定人物にまつわるスキャンダルや事件が発生すると、すばやく関連する動画を制作し、再生数や広告収入を目的に活動するユーチューバーを指す。 最近では「正義」の名の下に、特定人物を誹謗・中傷するコンテンツで収益を上げる者も含め、広義の意味で「サイバーレッカー」と呼ばれることが多い。 もっとも、オンライン上の名誉毀損容疑だけでは有罪判決を得るのが難しく、無罪や罰金刑で終わるケースも少なくない。これまで実刑判決を受けたケースは4件で、一部は性暴力処罰法違反や恐喝などの罪が加わり、懲役刑となった。 彼らが語る「公益」とは何なのだろうか。 私益を目的とする行為が果たして「公益」と言えるのだろうか。公益の範囲とはどこまでなのだろうか。 最近、政治・社会・芸能問わず、ユーチューバーが関わる事件・事故が相次ぐ中、改めて「正義」とは何かを考えさせられる。 結局、残るのは加害者の利益と被害者の傷だけだ。【news1 チョン・ユンミ記者】 (c)KOREA WAVE/AFPBB News

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