配信者はなぜ狙われるのか、女性ストリーマーたちが直面するストーキングの現実 米

Twitchで活躍する米・女性ストリーマーたちが、配信中にストーカーや脅迫の被害を受けている。ゲーム配信という身近な場所が、いつの間にか彼女たちにとって危険な空間へと変わってしまったのだ。いま、彼女たちに何が起きているのか。その背景を追った。 【写真を見る】1回5ドルで…ほぼ裸で電話をかけるインフルエンサー レイチェル “ヴァルキュレイ” ホフステッター、ブリタニー “シンナ” ワッツ、そしてエミリー “エミル” シュンク。彼女たちはTwitchで圧倒的な人気を誇る配信者であり、SNSのフォロワー数はそれぞれ数百万にのぼる。これまでの配信を通じて、彼女たちは巨大なコミュニティを築き上げてきた。そのファンたちは、彼女たちがゲームをプレイしたり、ブートキャンプに参加したり、料理対決をしたり、時にはカメラマンを引き連れて現実世界を歩き回る──いわゆる「リアル配信(IRL配信)」を楽しむために集まっている。 そして3月2日、その「IRL配信」が、一瞬で安全なものから危険な状況へと変わった。 それは、「Sis-A-Thon(シス・ア・ソン)」と題された数日間にわたる配信マラソンの一幕だった。ヴァルキュレイ、シンナ、エミルの3人は、夜のサンタモニカ・ピアを2人のスタッフと共に訪れた。そのうちの1人が、配信用のカメラを担当していた。3人は現地でファンと写真を撮ったり、談笑したり、終始リラックスした様子で歩き回っていた。 だが、ある瞬間、それは破られた。アトラクションのそばにしゃがみこんでいた半袖のボタンダウンシャツを着た男が3人を呼び止め、「自分の歌を聞いてほしい」と話しかけてきたのだ。しかし突然、男は態度を変え、エミルに電話番号を尋ね始めた。彼女が断ると、男は「じゃあ、ずっとついていくだけだ」と言い放った。 女性たちは、ピアの出口へと足早に向かいながら、「ストーカーかもね」などと不安を紛らわせるように冗談を交わしていた。しかし、その直後、あの男が再び現れ、またもや3人に近づこうとした。だが、カメラマンと、もう1人映っていないスタッフが男を制止し、彼女たちを守った。そのとき、ヴァルキュレイたちの顔は明らかにこわばり、声にも怯えがにじんでいた。そして次の瞬間、男は3人に向かって飛びかかるような動きを見せ、「今ここでお前らを殺してやる」と叫んだのだ。女性たちは悲鳴を上げながら警備員を呼び、必死でその場から逃げ出した。 この一部始終はTwitchの配信で生中継されており、その直後、配信画面はヴァルキュレイとシンナのイラストに「BRB Traveling(ちょっと移動中)」という文字が添えられた待機画面に切り替わった。 サンタモニカ警察は、Rolling Stoneの取材に対しメールでこう回答している。「サンタモニカ・ピアで、ある個人がグループに対して脅迫的な発言をしたとの通報を受け、警官が現場に出動しました。警官は関係者と接触し、安全確保のためにエスコートを実施しました。また、当該人物の捜索も行いましたが、その時点では発見に至りませんでした」。 事件の翌日、シンナとヴァルキュレイは再びTwitchの配信を行い、今回の出来事について語った。彼女たちはあの男から逃げるために近くの店に駆け込んだことを明かした。「アイツはまだ外にいる。でも私は、できる限りの手段を使ってアイツを見つけ出そうとしてる」。そう語るヴァルキュレイの隣で、シンナは涙をこらえきれずにいた。なお、ヴァルキュレイ、シンナ、エミルの3人はRolling Stoneのインタビュー依頼には応じなかった。 Twitchの担当者はRolling Stoneの取材に対し、こうコメントしている。「ハラスメントや暴力的な行為は、たとえTwitch外で起きたことであっても、私たちは強い憤りを感じています。現在、安全管理チームが継続して調査を行っています。Twitchはクリエイターとその安全を最優先に考え、彼女たちがしっかりとサポートされるよう努めています」。 今回の事件が起こる数日前まで、シンナとヴァルキュレイは、お互いの髪をアレンジし合ったり、ゲームをプレイしたりと、いわゆる「お泊まり会」風の配信マラソンを続けていた。しかし、この配信は、反動的なコンテンツクリエイターたちの標的にもなっていた。たとえば、ダニエル “キームスター” キームが運営するX(旧Twitter)のアカウント「DramaAlert」は、クリエイター同士のゴシップを拡散することで知られているが、彼らの投稿は女性配信者を貶め、「その振る舞い」を批判し、彼女たちのコンテンツは人気男性ストリーマーのそれよりも劣っている──といったメッセージを広めていた。 今回の襲撃が、3月2日に至るまで女性たちが受けていたデジタル上での誹謗中傷によって引き起こされたという証拠は現時点ではない。しかし、こうした出来事は、非常に深刻な傾向の一端を示している。

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