10代で殺人を犯し、計4回服役した…56歳の元受刑者が「人間って不公平なもんだよ」と漏らしたワケ

刑務所や少年院を出た後、再び罪を犯して塀の中へ戻る人は珍しくない。なぜ彼らは犯罪を繰り返してしまうのか。作家・山本譲司さんが上梓したノンフィクション『出獄記』(ポプラ社)より、一部を紹介する――。(第2回/全3回) ■「死んだあいつのほうが悪い」と思い続けた 「あのさ、山本さん、俺よー、人殺しちゃってんだけどな、ムショの中でもさ、『死んだあいつのほうが悪い』って、ずっと思い続けてたんだ。それから、共犯者のことも、恨み続けてたね」 最初の頃は、その人から、よくそんな話を聞かされたものだった。 その人の名前は、平沼隆康(仮名)さん。初めて会ったのが2007年の12月で、彼が56歳の時である。行く当てがないので助けてほしいという。 彼の支援を要請してきたのは、北関東のある都市に住む83歳の男性だった。42歳から保護司を務め、78歳まで続けた。 近藤(仮名)さんというその元保護司と、私とのつき合いは、拙著『累犯障害者』を通して始まった。近藤さんは、出版から間もない頃に、本の感想を、手紙にして送ってくれたのである。感想だけではなく、〈自分が担当した出所者のなかにも、知的障害者や聴覚障害者がいました〉との記述があった。 ■満期出所した後、元保護司と二人暮らし 早速私は、近藤さんと連絡を取り、何人かの出所者について話を聞く。黒羽刑務所の第一寮内工場にいた人も、担当していたのではないか。そう考えたのだが、残念ながら、私が名前を出した人は、誰も知らないという。 近藤さんは現在、断酒関係の自助グループの顧問も務めているそうだ。 近藤さんと私は、その後、保護司会の集会などで顔を合わせるようになる。手紙のやり取りも、何度かした。けれども、自宅を訪ねるのは、それが初めてだった。ずいぶん古い家らしく、壁の一部が剥げ落ち、柱も朽ちている部分がある。 夫人は、5年前に他界。今は、ある人物との二人暮らしだ。 奥の部屋から、のそのそと出てきたその人物が、同居人の平沼さんだった。彼は、半年前に刑務所を満期出所し、以来、この家に間借りをして住んでいるのだそうだ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする