トルコ当局は23日、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の「最大のライバル」とされる、主要都市イスタンブールのエクレム・イマムオール市長を、汚職などの罪で正式に逮捕し訴追した。当局は市長ら100人以上を19日に汚職容疑などで拘束していた。こうした動きに対する市民らの抗議デモは同日も続いた。 イマムオール市長の逮捕と訴追を受け、イスタンブール市役所の前には23日夜も大勢の抗議者が集まった。警察は抗議デモを解散させるため、放水砲や催涙ガス、ゴム弾などを使った。 市長の妻、ディレク・カヤ・イマムオール氏は市役所前で群衆を前に、自分の夫が直面する「不正義」は「全員の良心に響いた」と述べた。 抗議デモは、市長が19日に拘束されて以来毎晩続いている。AFP通信によると、トルコ81県のうち少なくとも55県に広がっている。2013年6月にイスタンブールの緑地再開発への抗議が全国的な反政府運動に拡大して以来の規模となっている。 イマムオール市長は23日に、 世俗主義政党の野党・共和人民党(CHP)の2028年大統領候補に選出される予定だった。 トルコ当局は市長を、「犯罪組織の設立と運営、収賄、恐喝、個人情報の違法記録、不正入札」の罪で起訴。 初公判までその身柄を拘束すると決定した。AFP通信と地元メディアは、同氏がシリウリの刑務所に移送されたと報じた。 トルコ内務省は声明で、イマムオール氏は市長の職も停止されたと表明した。 イマムオール氏は罪状を否認し、自分の逮捕は政治的動機によるものだと主張している。拘束される前にはソーシャルメディア「X」に「私は決して屈しない」と書いた。 イマムオール氏のほか政治家、ジャーナリスト、ビジネスマンを含む100人以上が19日に拘束されて以来、トルコでは十数年ぶりの大規模な抗議行動が各地で毎晩続いている。対するエルドアン大統領はデモを非難し、CHPが「平和を乱し、国民を分裂させようとしている」と主張した。 ■大勢が連帯の投票と野党 イマムオール氏はXへの投稿で、自分の逮捕は「わが国の民主主義の汚点」だとして、司法手続きが守られていないと批判。国民に抗議に参加するよう呼びかけた。さらに23日深夜には弁護士を通じてX、抗議活動に参加した人々をたたえたほか、CHPがこの日行った大統領候補の予備選に参加した有権者は、エルドアン大統領に「もうたくさんだ」と意思表示したのだと述べた。 CHPの大統領候補予備選には、イマムオール氏のみが出馬していたため、この投票は同氏への連帯を示すためのシンボル的なものと位置づけられていた。 CHPによると、23日の予備選には約1500万人が投票した。 そのうち約160万票が党員の票で、残りはイマモール氏への連帯を示すために別の投票箱で投じられた非党員票だという。 BBCはこれらの数字を独自に検証できていない。 イマムオール氏は今回の逮捕によって大統領選への出馬が妨げられることはないが、起訴された罪状のいずれかで有罪判決を受けた場合は立候補できなくなる。 ■デモで700人以上逮捕 イスタンブール県などでは集会が禁止されているが、抗議活動は5夜目となる23日も続いた。デモ隊は夕方までにイスタンブール市役所の近くに集まり、機動隊の前でトルコ国旗を振ったりスローガンを連呼したりしていた。 警官隊は一部の抗議者らに放水砲を向け、催涙スプレーを使うなどした。 トルコ当局によると、抗議活動が始まって以来、700人以上が逮捕された。 22日に市役所前で抗議していた若い女性はBBCに対し、デモに参加しているのは政治的な理由でも野党支持のためでもなく、民主主義を守るためだと話した。 「私は正義のために、自由のためにここにいる。私たちは自由な国民で、トルコ国民はこれを容認できない。私たちの行動と文化に反することだ」と、この女性は述べた。 11歳の息子を連れてデモに参加していた別の女性は、息子の将来が心配なので息子も参加させたかったと話した。 「トルコで暮らすのは日に日に難しくなっている。私たちは自分の人生をコントロールできず、誰がいいかも選べない。ここには本当の正義はない」 ■大統領のライバル トルコではエルドアン大統領が22年にわたり、首相と大統領を歴任してきた。イマムオール氏は、そのエルドアン氏に対抗できる最強のライバルとみなされている。 大統領には任期制限があるため、エルドアン大統領は憲法を改正しない限り、2028年に再選されることはできない。 野党関係者は、イマムオール氏らの逮捕は政治的な動機によるものだと批判している。 しかし法務省は、エルドアン大統領と今回の逮捕を結びつける人々を批判し、司法の独立性を主張している。 ソーシャルメディア「X」の国際政府業務部門は23日、トルコの通信規制当局がトルコの政治家やジャーナリストを含む700以上のアカウントをブロックするよう命じる「複数の裁判所命令」をXに通達してきたとして、それに異議を唱えたと発表した。 Xは、トルコ当局の動きは「違法だというだけでなく、そのようなことをすればトルコの何百万人ものユーザーが自国のニュースや政治討論にアクセスできなくなる」とした。 他方、イスタンブール大学は18日、不正行為の疑いでイマムオール氏の学位を取り消すと発表していた。 トルコ憲法は大統領就任の要件として高等教育修了を定めているため、同大学が実際に学位を取り消せば、イマムオール氏の出馬資格が不透明になる。 イマムオール氏の弁護団は、同氏の学位取り消しについて憲法裁判所と欧州人権裁判所に訴える方針を示している。 最高選挙管理委員会が、イマムオール氏の候補者資格を判断することになる。 検察当局はイマムオール氏を「武装テロ組織を支援した」罪でも起訴したい考えだが、トルコの裁判所は現時点ではそれは必要ないと判断した。 CHPは昨年の地方選挙で、親クルド派の人民平等民主党(DEM)と事実上連携していた。 DEMはクルド労働者党(PKK)と関係があると非難されているが、DEMはこれを否定している。 PKKは40年以上トルコに対して反乱を起こした後、今月初めに停戦を宣言した。PKKはトルコ、欧州連合(EU)、イギリス、アメリカでテロ組織に指定され、活動を禁止されている。 (英語記事 Fierce protests in Turkey after Erdogan rival jailed)