【カイロ=佐藤貴生】トルコの捜査当局は23日、最大都市イスタンブールのイマモール市長を汚職の疑いで正式に逮捕し、内務省は同氏の職務執行を一時差し止めると発表した。イマモール氏は20年以上も中央政界で権力を維持し、強権をふるうエルドアン大統領の最大の政敵。次期大統領選をにらんだ政権側の差し金ではないか-といった観測が国内外で広がっている。 イマモール氏は19日に身柄を拘束され、通貨トルコ・リラは対ドルで一時、史上最安値を更新した。イスタンブールや首都アンカラなどでは抗議デモが連日行われ、当局は22日には300人以上を拘束した。 イマモール氏は23日、X(旧ツイッター)に「(逮捕は)完全な違法」であり、国民に対する「裏切り」だと投稿し、大規模デモの実施を呼びかけた。 最大野党、共和人民党(CHP)のイマモール氏は2019年の選挙で勝利し、イスタンブール市長に就任。その後、エルドアン氏率いる与党、公正発展党(AKP)の候補との選挙戦も複数回制した。国内では高い知名度を誇る。 エルドアン氏を巡っては「終身大統領」の座に関心があるとの見方もある。03年に首相、14年には大統領に就任。閣僚の任命権や国会の解散権など広範な権限が大統領に移管された17年の憲法改正を受け、18年の大統領選でも当選した。 イスラム色の濃い政策を進め、批判的なメディアなど反対勢力を抑圧したエルドアン氏は、同時に経済低迷と深刻な物価高を招いた。最近では支持率でイマモール氏を下回る世論調査結果もあったという。 エルドアン氏は憲法改正後、18年に続き23年5月の大統領選でも再選された。規定では大統領任期は2期までだが、欧米メディアの報道では、選挙の前倒し実施や憲法改正の場合、次の選挙にも出馬できる。 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、イマモール氏はこの数年間に他の汚職容疑にも問われており、今後の推移次第では大統領選への出馬が禁止される恐れもある。 また、同氏の出身校であるイスタンブール大学は18日、別の大学からの転校に不適切な問題があるとして同氏の学位を取り消した。トルコ憲法では、大学卒でなければ大統領にはなれないとされる。