iPS臨床虚偽 森口氏「証拠出せない」 東大「1件やった」に疑問
産経新聞 2012年10月16日(火)7時55分配信
iPS細胞(人工多能性幹細胞)の世界初の臨床応用をしたと虚偽の発表をした日本人研究者、森口尚史(ひさし)氏(48)が15日、米国から帰国した。その後、所属先の東大病院から事情聴取を受け、「(当初の説明の6件の治療のうち)1件はやった。証明できる人は出てきてくれない。証拠が出せない以上、やったと言えないことが残念」と述べた。病院側はこの1件について「素直にそうだなとは思っていない」と疑問があるとの見方を示した。
同病院によると、森口氏は15日午後に成田空港に到着した際、上司の東大助教に電話し、同日付での特任研究員の辞意を伝えた。しかし、聴取では、進退について「調査にきちんと協力した上で身の処し方を考えたい」と後退させ、迷っているのかとの質問にうなずいたという。
過去の論文に所属先を東大医学部の「iPS細胞バンク研究室」と記載していたことについては「正式なポジションではない。活動を表現するための方便として使用した」と釈明。「ハーバード大客員講師」の肩書については「私的な書面をもらっている。公的なものではない」と話した。
治療に使ったとされるiPS細胞は、米国で2009年に2つの化合物を使用して作製したと主張。「11年春ごろに見ず知らずの人から患者に使いたいとの申し出がメールであった」と説明した上で、「手術者から倫理委員会の承認を取っていると説明され、信じた」としている。
3時間に及ぶ聴取後、東大病院の斉藤延人(のぶひと)副院長らが記者会見。「本院の職員が世間を騒がせていることは非常に残念。ご迷惑をかけていることをおわびします」と門脇孝院長のコメントを読み上げた。森口氏への聴取は継続するという。