<高3女子自殺>第三者機関いじめ9件認定…学校調査は不足
毎日新聞 2015年1月15日 21時56分配信
熊本県立高校3年の女子生徒(当時17歳)が2013年4月、自宅で首をつって自殺した問題で、学校の調査結果を検証していた第三者機関「県いじめ調査委員会」は15日、他の生徒の言葉など9件のいじめを認定し、自殺の要因の一つになったとする調査結果を蒲島郁夫知事に答申した。
いじめの存在を認めながら自殺の要因とは確定できなかった学校の調査報告書を「調査が不足していた」と批判。県教委や学校は記者会見して対応の不十分さを認めた。
自殺した女子生徒の父親は、いじめが自殺の一因とした調査結果について「全文を見ていないが、それは当初から分かっていたことだ。これを受けて学校や県教委がどう考えるか、今後の対応を見ていきたい」と話した。
学校の調査委は13年9月、体育大会のダンスの練習でうまく踊れない女子生徒への言葉をいじめと認めながら「(自殺は)複合的要因が考えられ、ダンスの練習だけが要因であると確定できない」とする調査報告書をまとめた。遺族が納得せず、県教委が蒲島知事に検証を要請した。
県いじめ調査委の調査報告書(A4判、100ページ)によると▽ダンスの練習中に他の生徒から「なんで踊れんと」などと強い口調で言われた▽数十回繰り返し練習させられた▽「顔がキモイ、動きがキモイ」などと言われた−−など計9件をいじめと認定した。調査報告書は「いじめによる自尊感情の低下、絶望的な気持ちが積み重なり、死の選択につながったものと思われる」としている。
答申後、記者会見した熊本大教授の古賀倫嗣委員長は学校の調査について「結論に至る過程で根拠に基づく議論がなされたのかが議事録では分からず、遺族への対応にも丁寧さを欠いた」などと問題点を指摘。調査が不十分になった理由として、委員会メンバーに臨床心理士がいなかったことや、遺族との信頼関係が築けなかったことを挙げた。
県教委の田崎龍一教育長と高校の校長らも県庁で記者会見した。田崎教育長は「対応が不十分だった点は遺族におわびする」と述べ、再発防止に向けたマニュアル整備と職員研修の充実に取り組む考えを示した。学校調査委員会の委員長を務めた校長は「分析や遺族への対応に丁寧さを欠き、深く反省している」と話した。【松田栄二郎、取違剛】