早大セクハラ疑惑”口止め教員”の怠慢授業

早大セクハラ疑惑”口止め教員”の怠慢授業
プレジデントオンライン 2018/6/28(木) 9:15配信

早稲田大学文学学術院の男性教員が、遅刻や休講など怠慢授業を繰り返していたとして、早大の公益通報窓口に通報されていたことが分かった。この男性教員は、渡部直己教授の元大学院生の女性に対するハラスメントについて、口止めをした疑いがもたれている。渡部教授は辞表を提出したが、この男性教員は「広報課にお問い合わせください」としている。早大のセクハラ疑惑、第3弾をお届けする――。

■「男性教員の授業実態も大学がちゃんと把握するべき」

 通報したのは、昨年4月、指導教員だった渡部直己教授から「おれの女になれ」などとハラスメントを受けた元大学院生の女性。被害女性によると、今年5月、渡部教授から受けたハラスメントの内容を書面にまとめ、「直訴状」として早大の鎌田薫総長あてに送付した。その際、男性教員の授業の怠慢についても一緒に報告した。

 総長に直訴した理由について女性は「大学のハラスメント防止室に被害を訴えましたが、ハラスメントが理由で中退したのに『中退をされた場合には、申立をお受けできない場合もあります』などと言われ、その対応に絶望しました。だから総長に訴えるしかないと思いました。また男性教員の授業実態も大学がちゃんと把握するべきと思い、そのことも書面に記しました」と話す。

 しかしその後、早大は鎌田総長ではなく、別の担当者が「ハラスメントと教員の怠慢は相談窓口が違うので、授業運営については改めて公益通報窓口に申し出てほしい」などと女性側に説明したという。また、早大は鎌田総長が直訴状を読んだ旨も伝えた。女性は早大の要望を負担に感じたが、指示に従い、公益通報窓口から申し出た。

■文芸誌『早稲田文学』の制作に携わっている

 早大は渡部教授のハラスメントについては調査委員会を設置したが、公益通報に対して調査を進めているかは明らかにしていない。早大はプレジデントオンラインの取材に対し、「公益通報があった場合は、定められた手続きにしたがって調査等の対応を行いますが、個々の案件については、通報の有無も含めて回答は差し控えさせていただきます」とコメントした。

 この男性教員は早稲田大学文学学術院の「現代文芸コース」に所属しており、渡部教授と距離が近く、文芸誌『早稲田文学』の制作に携わっている。また渡部教授のハラスメントに関しては、同僚の教員に「どこで誰に何を言うかはよく考えたほうがいい」などと口止めをした疑いがもたれている。

■「予定されていた授業の半分くらいは休講」

 昨年春に男性教員の授業を受講し、今年3月に現代文芸コースを修了した会社員の女性はこう話す。

 「私は男性教員の文芸批評に関する授業を受けていました。内容は事前に指定されたテキスト読んできて発表や討論をするというもの。私の記憶では予定されていた授業の半分くらいは休講でした。授業があったとしても『ごめん、会議が長引いてしまって』と特に悪びれることなく遅刻してきました」

 「他の先生はこんなことはなかったので、何で男性教員だけが許されるのか、全く不可解でした。別の教員に相談したのですが、その教員には『早稲田文学の編集や執筆で忙しいから……』とお茶を濁されました。なぜ授業をちゃんと行わない人に教えさせているのか、大学の判断が理解できません。学生を舐めているように感じました」

 「男性教員は授業中に、渡部教授のセクハラを容認するような発言もしていました。渡部教授が文芸関係の女性にセクハラ行為をして怒らせてしまった過去を紹介し、『渡部さんはすごいキレキレの文章を書くのに、そういうことをポロっとしちゃう。でも悪気のないかわいい人だからみんなも温かい目で見てあげて』と。そんな発言などに嫌気が差し、授業に通うのを途中でやめました。単位は落としました」

■「開始から終了まで教室にいたことは一度もなかった」

 また、ハラスメント被害を受けた女性と同級生だった男性はこう振り返る。

 「私は17年度の前後期に男性教員の授業を履修していました。なぜ彼の授業運営を周囲が許してきたかと問われると難しいですが、自分自身も『大学院とはこういうもの』と勘違いしてしまっていたところがありました。また、学生の中には男性教員が制作に携わる『早稲田文学』に自分の作品を掲載してもらいたい、という希望を持っていた人もいたと思います」

 「とにかく、彼の授業は突然の休講が多かったです。それも大学事務を通さず、男性教員から直接メールで休講を伝えられていました。教員から直接連絡を受けた他の学生からLINEで教えてもらうこともありました。たとえ授業があったとしても、必ず遅刻してきました。それに、授業中、携帯電話に出て、話ながら教室の外に出てしまうことも多かったです。そのたびに授業は中断されました。私が記憶する限り、男性教員が授業の開始時刻から終了時刻までフルで教室にいたことは一度もなかったです」

 「結局、私は彼の不誠実さに苛立ちを感じたほか、授業そのものも魅力的に思えなくなり、後期の途中から授業に行くのをやめました。たしかに忙しい人なのだと思います。ただ、授業にちゃんと出られない時点で男性教員は職を辞するべきではないでしょうか。彼がこなかった分の授業料は大学から返してほしいと切に願っています」

■「今、生徒に映像見せているから大丈夫」

 男性教員と同じ学部に勤める教員はこう証言する。

 「男性教員の遅刻は当たり前だったようで、ひどいときは1時間も遅刻していたそうです。学生に直接連絡を入れて授業を休講にしていたのは、おそらく大学経由で休講の連絡をすると、後から補講しなくてはいけなくなるからだろうと思います」

 「あるとき、男性教員と打ち合わせしていた途中で、その時間が彼の授業中であったことに気づきました。そのことを伝えると『今、生徒に映像見せているから大丈夫』と言っていました。学生に映像資料を見せている間に、授業を抜け出すのは『さすがにまずいのでは』と思いましたが、当時の自分は彼を指導できる立場になかったため、言い出せませんでした」

■渡部直己教授は「退職願」を提出

 中央教育審議会は、2008年、学生の学習時間を増やす必要性を指摘。大学設置基準に沿い、1科目(2単位)につき最低でも15回の授業を行うことをあらためて求めた。また多くの大学では、シラバス(授業計画)を詳細に記すことが義務付けられている。教員の都合で遅刻や休講などの怠慢授業が繰り返されていた場合、単位として認められなくなる恐れがある。

 プレジデントオンラインの取材に対し、男性教員は6月26日、メールで「ご質問の窓口は広報に一本化しておりますので、(大学の)広報課にお問い合わせください、とお返事するようにとのことでした」と回答している。

 早大は6月26日、「本学教授によるハラスメント行為に関する報道について」というリリースを出し、渡部教授から「『退職願』を大学あてに送付した旨の連絡がありました」と通知している。

 プレジデントオンラインでは引き続きこの問題を報じていく。

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