高2自殺、積み重なった“悪ふざけ”…いじめ認識なく関係者苦悩

高2自殺、積み重なった“悪ふざけ”…いじめ認識なく関係者苦悩
西日本新聞 2019/3/28(木) 10:34配信

 福岡県久留米市の県立高校2年の男子生徒=当時(16)=が昨年6月、いじめ被害を訴えるメモを残して自殺していたことが27日、分かった。有識者でつくる県教育委員会の第三者委員会は同日、男子生徒が所属していた野球部内でのいじめを認定、自殺の原因とする調査報告書を県教委に提出した。

 報告書などによると、6月22日夜、男子生徒が亡くなっているのを家族が見つけた。同日あった野球大会の抽選結果の公表を巡り、仲間内の約束を破ったとして同学年の部員から非難され、無料通信アプリLINE(ライン)のグループから外された。生徒は約束を知らなかった。他にも昨年4〜6月に複数回、服を脱がされたり、携帯電話を隠されたりした。一連の行為には6人が関わっていた。

 男子生徒は自殺の直前、スマートフォンにメモを残しており「みんな今までありがとうgood−bye」「毎日色々言われてもう限界やった。物を隠され、グループを退会さ(せ)ら(れ)毎日楽しくなかった」「生きているだけで苦痛だったよ」などと、同級生の名とともに記していた。

 第三者委は、一連の部員の行為をいじめと認定。男子生徒は「不満を蓄積していたと思われる」と指摘し「衝動的に自死に至った」と因果関係を認めた。

 学校の対応については「特段の問題点は見受けられなかった」とした。野球部は、主力選手だった男子生徒が亡くなり部員の動揺が大きいとして、昨年の全国高校野球選手権大会の地区大会出場を辞退している。

 27日、県庁で記者会見した男子生徒の両親の代理人弁護士によると、学校や同級生に謝罪を求める意向という。父親は「息子の死に向き合い、このようなことを繰り返さないでほしい」、母親は「同級生には心の底から謝ってほしい」などとするコメントを出した。

 県教委は昨年7月、第三者委を設置。同級生を含む約30人、教職員約10人の計約40人に聞き取りなどをしていた。

“悪ふざけ”結果と落差 いじめ認識なく関係者苦悩

 「悪ふざけ」の行動が積み重なり、衝動的に自殺に至った−。自殺した男子生徒=当時(16)=は周囲から「いじられキャラ」とみられ、野球部内でも遊びの延長で服を脱がされるなどしていたとみられる。仲間内でいじめとの認識はなく、結果の重大性との“落差”に関係者の苦悩は大きい。

 福岡県教育委員会の第三者委員会は、いじめ行為に関わった同学年の野球部員を含め、約30人の生徒から聴取。ほとんどはいじめがあったとは認識しておらず、男子生徒の自殺を不思議がる生徒もいたという。

 一方、第三者委によると、男子生徒は自殺する約1週間前に実施された学校生活に関するアンケートで不満を記すことはなく、担任との面談でも被害を訴えることはなかった。友人に話した形跡もなく、家族すら「自殺するまで全く気付かなかった」(代理人弁護士)という。

 第三者委は「高校生段階でいじめに遭っていることを、先生らに伝えることに心理的抵抗があるのは自然なこと」と説明。一方で「いじめ防止の手だてを丁寧にやっても、今回のような事例を防げるかは危うい」として、いじめ関連を含め、包括的な高校生の自殺防止への取り組みを検討するよう県教委に提言した。

 男子生徒の母親は公表したコメントに記した。「ちっぽけに見えることでも、子どもは誇りや自信を失い、孤立し、絶望で死を選ぶしかないようになってしまいます」

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