教員免許「うっかり失効」救済なし 熊本市教委、失職防止で手続き管理強化へ

教員免許「うっかり失効」救済なし 熊本市教委、失職防止で手続き管理強化へ
熊本日日新聞 2020/12/13(日) 17:35配信

 熊本市立小学校に勤務する主幹教諭の男性(55)が、教員免許の更新手続きをしなかったため失職した。主幹教諭は更新に必要な講習を免除されるが、男性は県教育委員会に免除を申請しなければならないのを知らず、免許が失効した。失効者は毎年おり、文部科学省は「うっかり失効」がないよう定期的な確認を促している。

 免許の更新制度は教える側の資質向上のため、2009年度に全国で一斉導入。10年ごとの更新時期を迎える教員は、大学などで30時間以上の講習を受ける必要がある。運転免許のような事前の個人通知はない。

 男性が県教委に採用されたのは1994年。18年に主幹教諭に昇任した際、免許更新時の講習が免除されることを知ったが、更新手続きそのものが必要ないと勘違いしていたという。今年11月19日に勤務先の教頭が気付き、免許の期限だった9月末にさかのぼって失職した。うっかり失効に対する救済措置はなかった。

 男性は10年度に最初の免許更新時期を迎えたものの、大学院で学んで専修免許を取得していたため、当時勤務していた学校の教頭の助言で更新期限の延期(10年間)を申請。実際の手続きを一度も経験しないまま、本年度の更新時期を迎えていた。

 県教委は10年度に6件の未申請があり、このうち1件が失効したため、更新期限や受講・申請状況などを校長が管理するシートを翌年に導入。その後の失効は出向中の手続きミスによる17年の1件にとどまっている。

 一方、熊本市教委が使用するシートは免許の種類や期限などしか記載がなく、更新手続きが管理しにくい。教職員課は今回の失効を受け、「教員らの思い込みがあっても、確実に防げるようにしたい」と説明。県教委のようなシートの導入などを検討するという。政令市に移行後の失効は今回が初めてだった。

 文科省によると、18年度に更新期限を迎えた全国の教員約9万人のうち、失効者は0・3%。同省教育人材政策課は「更新は基本的に個人の責任。更新制度導入前に免許を取った教員は、特に気を付けてほしい」と呼び掛けている。

 男性は、その後の講習で教員免許を近く再取得できる見込み。ただ、教委の採用試験に合格して教諭に戻れる保証はなく、家族のことを考えて不安になるときもあるという。

 そうした中でも、勤務していた小学校の保護者などから励ましのメールが届いており、「周囲に迷惑をかけて申し訳ない限りだが、頼りにしてくれる親子がいるうちは頑張りたい」と話している。(澤本麻里子)

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