「俺は何も悪いことはしてへん」“GoTo詐欺”で逮捕された山本セキ元監督(53)に羽交い絞めにされた夜《大阪偕星学園高校野球部》
春オンライン 柳川 悠二 2022/01/16
私はあることをきっかけに、大阪偕星学園時代から付き合いのあった山本とは距離を置くようになっていた。そして、大阪府警の発表より早く、関係者から山本が逮捕されたという連絡を受けた時には、とうとうこの日が来たか——という感想しか抱かなかった。
初めて山本と対面したのは2015年の夏。大阪偕星学園高校が甲子園出場を決めた後に山本に密着取材する機会があり、名刺を渡すと第一声がこうだった。
「君は在日か?」
日本に帰化する以前の山本は韓国籍だったと打ち明け、韓国に多い姓である「柳」の字が入った筆者の苗字に反応したようだった。甲子園に出場するにあたって、新調されたユニフォームには学校の所在地である「IKUNO(生野)」の文字が入っていた。市町村名を入れる学校は多いが、自治区名を入れる学校は珍しい。その理由を「生野区は在日外国人も多くボーダーレスな社会がある。人を見た目や国籍、肌の色で判断することのない素晴らしい地域。地元の方に愛されたいし、地元の人の活力になりたい」と説明していた。山本セキという人間のアイデンティティが伝わってくる熱い言葉だった。