破綻の道程:堀越学園解散/6止 辞任拒み、融資停止 暴走続けたトップ /群馬
毎日新聞 2013年4月5日(金)10時58分配信
07年夏。学校法人堀越学園(高崎市)は主力の群馬銀行からトップ交代を迫られていたという。同行は学園に対し、土地購入や校舎建築資金と短期の運転資金を合わせ、約15億円(07年4月)の融資をしていた。
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学園は04年に創造学園大、06年に高崎医療技術福祉専門学校(医専)を相次いで開校。03〜06年度の4年間に行った設備投資により固定資産が13億8500万円増加した。その一方で、手持ちの現預金などが約12億円減ったうえ、借入金や未払い金が約19億円積み増された。増えた固定資産分を差し引いても17億円以上の財産をすり減らした勘定だ。経営コンサルタント会社からは「07年8月時点の負債35億3100万円に対し、不動産などを即時換金化した場合の資産(清算時価)は23億7000万円で、11億6100万円の債務超過になる」と指摘された。
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「あなたが辞めれば、銀行は融資を続けてくれる」。理事会で広中平祐学園長ら3人の理事が強く迫った。堀越元理事長は「先代(養父久良氏)から引き継いだ、僕の学園だ」「資金は、自己調達できる」などと主張し、首を縦に振ることはなかったという。
群馬銀行からの融資が止まり、学園所有地や校舎に加え、連帯保証していた堀越元理事長の自宅などに同行の担保権が設定された。この年の12月には給与遅配が始まり、広中氏ら3人は解任に近い形で学園を去った。
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規制緩和の大きな流れの中で05年、私立学校法が改正された。理事長の代表権を明確化する一方で、理事選任方法などの明文化、監事や評議員制度も改善して、チェック機能の強化を図った。また、経営の透明性を確保するため、利害関係人が閲覧する決算・財務書類の事務所備え置きを義務づけ、インターネットなどで一般公開するよう求めた。
同学園では「寄付行為」で選任方法が定められていたが、堀越元理事長が指名する形で理事交代が続いたという。「理事長が一人でしゃべり、疑問を呈したり、反対できる雰囲気は全くなかった」「会議で反対意見を述べても、議事録に載らなかった。責任が持てないから辞めさせてくれと言っても、彼は取り合わなかった」「白紙の議事録に署名捺印(なついん)を求められた」。元理事たちは、自戒を込めて語り出した。
義務づけられた決算・財務書類の備え置きもなく、経営状況の説明を求める声は封じられた。
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トップは「暴走」を続け、堀越学園は破綻へと突き進んだ。
専攻を続ける大学が見つからず専門学校を選んだ声優コース履修生。埼玉県の大学に往復5時間以上かけて通う女子学生。国家試験の合否判定を保留されて不安の日々を過ごした26人の医専卒業生。あと1年は一緒に過ごせるはずだった89人の幼稚園児……。学舎に集う人たちに強いられた労苦は、計り知れない。【増田勝彦】=おわり
4月5日朝刊