フィリピンで「中国スパイ」の容疑者が逮捕され、衝撃が広がっている。情報通信機器を載せた車を走らせ、軍の施設や電力インフラを撮影し、中国に情報を送っていたという。捜査当局への取材で、その手口が明らかになってきた。 「中国人グループが自律走行車の開発を装い、国防に関わる情報を違法に収集している」 昨年12月、フィリピンの海軍から国家捜査局に連絡があった。 この情報をもとに捜査員が内偵捜査を続けていたところ、翌1月17日にマニラ首都圏内でこの車を発見。乗っていた中国籍のデン・ユアンチン容疑者(39)とフィリピン籍の男2人が逃走しようとしたため、逮捕した。 ■発電所やショッピングモールまで 3人が後部の荷物を積むスペースを隠そうとするそぶりを見せたため、捜査員が車内を調べたところ、情報通信機器が発見された。朝日新聞が入手した写真では、LANケーブルやバッテリーにつながれた黒い直方体の機器が確認できる。 その後、サイバー捜査班などの解析で、車の走行ルートが浮かび上がる。 車は昨年12月13日から今月16日にかけ、北部ルソン島の全域にわたる広範囲を移動し、地形や建造物のデータを収集していた。軍本部のあるキャンプ・アギナルドや、米軍の使用が認められている軍事施設、発電インフラの映像や位置情報が含まれる。対象は空港や港湾、ショッピングモールにも及んだ。 機器はインターネットに接続され、遠隔操作したりリアルタイムでデータを送信したりできる仕組みで、中国からアクセスされた記録があった。