デビュー作『ポピーのためにできること』(山田蘭訳、集英社文庫)が話題となったジャニス・ハレットの新作『アルパートンの天使たち』(山田蘭訳)は前作同様、地の文がなくメールやニュース記事、インタビューの音声起こし等で構成されるミステリ。 犯罪ノンフィクション作家のアマンダ・ベイリーは、十八年前に世間を騒がせたロンドン北西部の事件に着手する。それはカルト教団〈アルパートンの天使〉の信者たちが凄惨な姿の遺体となって見つかり、教団の指導者が逮捕された、というもの。現場にいた十七歳の少年少女と乳児は現在消息不明で、アマンダはその乳児の行方を追って当時の警察関係者や社会福祉関係者への取材を重ねていく。同じ題材を扱う元同僚のオリヴァーと情報を共有するが、実は彼はアマンダにとって因縁の相手だ。 アマンダとオリヴァーの皮肉たっぷりのメッセージのやりとりなど、本筋とは関係なさそうな文面も多々挿入されるが、それらが意味を成す終盤は圧巻。