「売掛」が「立替」になっても変わらない…新宿歌舞伎町”悪質なホストたちの金銭トラブル”最新事情

女性客に高額な料金を請求して借金を背負わせる――ホストクラブで起きている金銭トラブルを受けて、警視庁は「色恋営業の禁止」を盛り込んだ風営法改正案を’25年の国会に提出すると発表した。色恋営業とは「関係性が壊れる」ことを仄(ほの)めかし、客の恋愛感情を悪用して多額のお金を巻き上げる営業手法を指す。 金銭トラブルに関しては’24年4月、ホストクラブの業界団体が“売掛金(ツケ)による支払いの廃止”、“親族や第三者から取り立てをしない”という方針に加え、“20歳未満の新規客の出入りを禁止にする”などの自主規制ルールを整備。業界の健全化を図った。しかし同年11月、売掛金を回収するために客に売春させようとした売春防止法違反の疑いで24歳のホストが逮捕されるなど、悪質なホストによる被害は後を絶たない。 ◆「売掛」は「立替」になった 客の飲食代をツケ払いにすることがまかり通っていた新宿・歌舞伎町のホストクラブ。自主規制によって廃止されたはずの売掛は、いまだに名称を変えて存在しているという。ホストクラブをよく利用するというAさんは、担当(自身が指名しているホスト)から“売掛は実質的にまだ存在している”と聞いたという。 「『売掛』は廃止されて『立替』っていう言葉に変わりました。『売掛』は店から客が借金をして、そのお金を担当が絶対に回収するという前提で行われていましたが、『立替』はホスト個人が客の借金を肩代わりします。つまり、客と担当との個人間での借金。客が借金を負わされるという点は変わっていないんです」(Aさん) ネット掲示板やSNSのホストクラブ利用者の書き込みには《ここって立替できる?》《○○(ホストの名前)は売掛と詐欺で金引っ張ってる》《色恋で女に体売らせて店で金を使わせてる》という声がいまだに多くあがっている。 ◆少額の借金はしやすくなった 売掛が立替となってから、変化したことがある。借金のしやすさだ。Bさん(20代)は「ホストに直接借金をすることになったため、担当ホストを応援する感覚で、今まで借金をしていなかった女性までもが借金を背負うようになった」と言うのである。 「50万円を超えるような高額の売掛伝票(通称・青伝)が規制で切れなくなり、高額の借金はできなくなりました。ただ、立替は店ではなくホスト個人とのやり取り。『今日持ち合わせないけど……』と言うと『3万くらいなら立替するよ』とホストに言われて『それくらいなら……』といった感覚で簡単に借金ができるようになった。金額が小さいので、ホストでお金を使うことへの気軽さが増したみたいです」(Bさん) 担当を応援するための貢ぎ物も増えたという。 「売掛廃止でホスト個人の売り上げが落ちた、という話も聞きます。そうなると、売り上げ以外でなんとか担当に貢献しようとする人が出てくる。ご飯代もそうですし、ブランド物などを貢ぐ人も出てきています。前々からこうした人はいましたが、これまで貢いでいた人たちとは違う層の人たちが『担当のために……』と行動するようになった」(前同) 20歳未満の客の入店を禁止するというルールも形骸化しているようだ。フライデーデジタルが取材したある女性客は「友達は20歳で私は19歳なんだけど、身分証を確認されたにもかかわらず、普通に入れた」と言うのだった。 ◆風俗へ斡旋するスカウトとの繋がり 悪質ホストに風俗で働かせられたり、売春をさせられる女性客がいる現状は変わっていない。その背景には“ホスト、スカウト、ホスト狂いの客3者の切っても切れない関係”があるという。スカウトが稼ぐうえで、ホストと組むことは欠かせないというのだ。かつてスカウトとして活動をしていたHさんが言う。 「私は性風俗店への斡旋をしていました。お金に困って短期間で大金を稼ぎたい女性を、デリヘルやソープ等に紹介するのです。借金漬けの女性を見つけたいなら、ホストに聞くのが一番早い。 借金を焦げ付かせるとホスト自身が払わなければなりません。ホストからお金に困っている女の子を紹介してもらい、風俗店へ斡旋する。ホストにとっても、紹介することでバックがもらえるから、いい小遣い稼ぎになる」(Hさん) 売掛が禁止になったことで売り上げが減り、スカウトを兼業するホストが増えているという。所属するスカウトグループ、ホストクラブによっては兼業は禁止されているのだが……。 女性客を風俗店で働かせず、「立ちんぼ」などで売春をさせるというケースもある。歌舞伎町でホストをしていたというSさんは「ホスト側で管理がしやすいから」とその理由を明かす。 「店を介さずに売春させるのは、女性がどれだけ売り上げたのかがわかりやすいから。立ちんぼは一回の売春で1万5000円から2万円が入る。1日何人に相手をさせるかによりますが、もらったお金がそっくり女性の財布に入ってきます。 風俗店に中抜きされることがないから計算が楽で、ホストが自分の客の借金分だけ働かせるのに都合がいいんです。『締め日までに40万必要だから、20人と寝てこい』なんて言うわけです」(Sさん) ホストが利用客に無理な借金をさせ、風俗や売春などをさせている実態が露見したことから始まった自主規制。 しかし、その後も風俗等で女性が稼いだお金が悪質なホストに搾取されるという構図は変わっていないようだ。今後改正されるかもしれない風営法の〝色恋営業禁止〟は果たして効果があるのだろうか。 取材・文・撮影:白紙緑

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