逃げる犯人、とらえる映像 防カメ「リレー捜査」はなぜ初動捜査の主役になりえたのか

防犯カメラなどの映像を分析し、犯人の足取りを追う「リレー捜査」が存在感を増している。態勢整備や捜査員の練度向上といった警察当局の取り組みに加え、カメラの増加などが後押しし初動捜査の主力として台頭。長野市などで起きた殺傷事件のほか、1月に大阪府東大阪市で切断遺体が見つかった事件でも容疑者逮捕につながった。ただ、カメラ捜査には住民の協力が不可欠。厳正な情報管理などによって、警察への信頼をさらに積み上げる意識が重要となる。 大阪府警は今月3日、東大阪市の山中に切断遺体を遺棄したとして、死体遺棄容疑で大阪市中央区の無職、大木滉斗(ひろと)容疑者(28)を逮捕。遺体の身元は、容疑者と同じマンションの別の階に住む国土交通省職員、神岡孝充(たかみち)さん(52)と判明した。 逮捕のきっかけとなったのは防犯カメラの映像だ。遺体の遺棄現場付近のカメラに、不審人物がキャリーバッグを引きながら山を登る姿が写っていた。府警はカメラの映像を次々とたどるリレー捜査を実施。容疑者が住むマンション付近でも同様の映像を確認し、不審人物の身元を特定した。 カメラ映像は古くから事件捜査に活用されてきたが、犯行の様子を直接記録したものなどに限られてきた。複数の映像を分析し、つなぎ合わせる手法を組織立って行うようになったのは、平成21年に警視庁が設立した捜査支援分析センター(SSBC)が先駆けとされ、以降、他府県でも導入されるようになった。 大阪府警では27年に専門部署を設置。現在は「犯罪対策戦略本部」の名称で、機動支援係に数十人のカメラ捜査のプロフェッショナルを擁する。警察署などからの要請を受け、係員が現場に急行。画像データの収集や分析などにあたり、犯人の足取りを追う捜査を支援している。 地道な作業だが、府警幹部は「犯人の姿を捉えたカメラを入手するには、捜査員のセンスが求められる」と強調する。都心部であればビルやマンション、民家などカメラの数は膨大。加えて近年はドライブレコーダー、スマートフォンのカメラなど収集対象の映像が多様化し、数日でデータが上書きされるものもあるため、時間との戦いも強いられる。 逃走方向を的確に読み、雑踏の中でも対象者を見分けられる力。時には現場での聞き込みで情報を集める必要もあり、係員の多くは一定の捜査経験を積んでいる。

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