わいせつ教諭多発 背景に教員の社会的地位や地域の関心低下

わいせつ教諭多発 背景に教員の社会的地位や地域の関心低下
2008.6.29 19:58 産経新聞

 今年6月、茨城県行方(なめかた)市の市立中教師(38)が、顔見知りの女児=当時(11)=に性的暴行を加えたとして、強姦容疑などで茨城県警に逮捕されるなど、今年になって、教え子らへの性的問題で逮捕されたり、処分されたりする教育関係者が相次いでいる。現場には「個人の問題で未然に防ぐのは難しい」という声が根強い。だが、専門家の中からは、教員の社会的地位の低下や、地域と教諭の関係が薄れていることも一因とする指摘を出ている。

 逮捕された同県行方市立北浦中教諭、小島秀和容疑者は昨年2月ごろ、ドライブに誘った女児をホテルに連れ込み、性的暴行をしたとされる。今年5月に情報提供があり、県警が内偵捜査を進めていた。

 昨年4月ごろからうわさになり、当時の校長が本人に確認。小島容疑者が強く否定したため、副担任として引き続き教壇に立たせていた。このときの学校の報告は、行方市教委から茨城県教委には伝わっておらず、当時の校長や市教委の対応が不適切だったとみる関係者も多い。

 また、5月31日には、埼玉県所沢市のファストフード店で、高2女子生徒(16)にわいせつな行為をしたとして、県青少年健全育成条例違反の疑いで、元中学校校長で東京都武蔵村山市の教育相談員、佐藤学容疑者(62)が逮捕された。佐藤容疑者と女子生徒は教育相談を通じた知り合いだった。

 埼玉県警などによると、女子生徒は「元校長で信頼できる人だと思って我慢していた」と話している。わいせつ行為は昨年暮れから数回程度あったという。

 この2つの事件は、一つは幼い児童、一方は相談相手という、いずれも弱みにつけ込んだ悪質なものといえる。

 ベテラン教師は「教師は権力を持っており、多くの子供は言うことを聞く。それを、何をやっても許されると勘違いしたのではないか」とみる。

 約40年の中学教師経験を持つ河上亮一・日本教育大学院大教授は「かつては地域や保護者が教員を聖職者として扱い、行動を規制してきた。こうした共同体が消え、教員を取り巻く環境も変わっている」として、教員の社会的な地位の低下が一因だとみる。

 埼玉県教委の委員長を務める高橋史朗明星大教授は「最近の性をめぐる風潮は、教師も例外ではない」と強調。現在の採用方法や研修、人事管理では個人の性的問題を未然に防ぐこと難しいという。

 被害防止策として、河上教授は「人間にはこうした欲望がある、ということを前提に教員管理のシステムをつくり直すべきだ」として、法律や処分を厳しくする一方、地域が教員をサポートとコントロールする制度の創設を提案する。

 また、高橋教授は、授業技術を上げることが中心になっている現在の教員研修に、モラルや自己抑制力など人間力の育成も取り入れる必要があるとした。そのうえで、子供たちに配慮し、負担を感じないで相談できるような環境づくりにも取り組むべきだとしている。

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