自民党の金権体質がまたぞろ露呈した。 しかも裏金事件とは無関係とされ、総裁に選出された石破茂首相の「政治とカネ」に絡む信じがたい失態である。 石破氏が党1期生15人との会食に際し、1人当たり10万円分の商品券を配っていたことが分かった。 石破氏は「土産代わりに家族へのねぎらいからポケットマネーで用意した」と述べ、同様の趣旨の商品券配布は、これまでに10回程度行ったという。政治資金規正法や公選法には抵触しないと強調する。 だが、そうした説明は到底納得できるものではない。 自民の根腐れを断つ政治改革の緊要性を改めて指摘したい。 政治資金規正法は、個人から政治活動に関する政治家への金銭等の寄付を禁じている。商品券配布の目的次第では、法に抵触する恐れがある。 配られた側の議員らも「不適切と考えて返した」とし、全員が後日返却したという。全く問題ないと強弁する石破氏の見解との矛盾は明らかである。 野党からは「一種の買収だ」(前原誠司日本維新の会共同代表)などと批判が相次ぎ、与党・公明党の斉藤鉄夫代表も「耳を疑った。国民の理解を得られない行為は厳に慎むべきだ」と求めた。 きのうの国会で、国民感覚とのずれを指摘された石破氏は、「感覚を失っていることを深く反省する」と陳謝した。 少数与党の不安定さに加え、党内からは「(今夏の)参院選が戦えない」と退陣論もあり、政局は一層不透明さを増す。 ただ、選挙目当てで看板をすげ替えても、国民の理解は得られまい。 目を向けるべきは、政治とカネの不祥事を繰り返し、国民から痛烈な批判を浴びてもなお、自浄能力が一向に働かない自民の体たらくだ。 一昨年12月に表面化した派閥裏金事件は、旧安倍派議員の逮捕や、3派閥の会計責任者らの立件などに発展し、岸田文雄内閣の退陣につながった。 党内で長く非主流派だった石破氏は時の政権や党執行部に苦言を呈する姿勢が一定支持されてきた。だが首相就任後は、裏金事件で新たな疑惑が浮上しても再調査に踏み出さず、人ごとのような言動を続けてきた。今回の不祥事もその延長線上にあると言えよう。 「金権腐敗の温床」と指摘されてきた企業・団体献金について、石破氏と自民執行部は、禁止に強硬に反対している。 求められるのは、政治とカネを巡る不祥事を今度こそ断ち切るため、疑惑を招く余地のない仕組みをつくることだ。 自民は、国民の不信が極みにあると自覚し、形だけの透明化でしのごうとする姿勢を根本から改めるべきだ。