「遅延」「拒否」「除去」大手保険会社CEOを射殺した3つの銃弾の意味とは?

2024年12月4日水曜日朝、ニューヨーク・マンハッタンのミッドタウンのホテル前で射殺された大手医療保険会社「ユナイテッドヘルスケア」CEOのブライアン・トンプソン氏の事件では、現場に残された銃弾の薬莢には「遅延(delay)」「拒否(deny)」「除去(depose)」という言葉が書かれていた。 これまで容疑者が沈黙していたので事件の詳細は不明だったが、FOXニュースがドキュメンタリー番組を組むなどして、ようやく概要が明らかになってきた。いったい、なぜこのようなCEOの射殺事件が起こったのだろうか。 ◾️銃弾に込められた意味とは アメリカの医療保険は、日本人が通常、医療保険に期待する内容の10倍は複雑であると言われている。 高齢者や母子家庭を除けば、アメリカの医療保険はどこの州でも民間保険を使うことになる。政府の保険よりも民間のほうが、マーケティングの競争などもあり、携帯のキャリアのように効率的で安く済むという建てつけのはずなのだが、実際はそうではない。 甘言を用いて顧客を獲得し、実際に顧客が医療にかかると、その具体的な治療を保険適用とするかの検討を遅らせ、拒否し、「それは話が違う」と食ってかかる顧客は排除してしまう――そういうシステムによって保険会社は利益を上げているとも報道されている。顧客はとんでもない悲劇に見舞われる仕組みだ。 もちろん保険を使ってみれば、実際はそこまで単純に悪辣なものではない。多くの治療は、世の中にあふれる疾病の治療であり、一般的な治療方法をめぐっていちいち検討対象となるはずがない。 しかし、医療の世界はどんどん進化しており、新薬や新しい治療技術が生まれると、持病を持つ人や症状が悪化する人は、そういったものにすがりたくなる。 健康な人でも、たまには入院することもあるが、その際、ほとんどの人が、保険会社が不透明な運用を行い、上記のような利益追求を第一のコンセプトにしていると「感じたことがある」はずである。 ところで、前出の3つの銃弾の薬莢は、2010年に発刊されたジェイ・ファインマンの著書「Delay, Deny, Defend」(「遅延、拒否、防御」)と明らかに関連しているとみて間違いがない(最後の「防御」を容疑者が「除去」としたのは、意図的か誤りかは不明である)。

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