龍谷大平安高の硬式野球部監督が、部員2人に暴行し、1人に全治30日のけがを負わせていたことが明らかになった。 春夏合わせて最多76度の甲子園出場を誇る名門で、監督は同高歴代最多の通算31勝を挙げた指導者として知られただけに、京都球界のみならず、全国のスポーツ界や運動部活動に波紋を呼んでいる。 昨年夏には近江八幡市の野球チームで40代の指導者が、中学生を殴り、包丁を突きつけたとして暴行罪などで逮捕、起訴された。 部活の体罰による子どもの自殺などを受け、スポーツ界で「暴力行為根絶宣言」が採択されて10年余り。こうした問題が繰り返されていることに、悪しき体質の根深さを感じざるを得ない。体罰や暴言を「厳しい指導」として容認する誤った考えが残っていないか。 暴力を受けて育った子は、暴力への抵抗感がなくなりやすいとも指摘される。心身に苦痛を与えて人の尊厳を侵害するハラスメントや、部員同士のいじめなどを含め、スポーツ界から排除し、負の連鎖を断たねばならない。 龍谷大平安の監督は先月、野球部寮で部員2人の頭や肩などを手のひらやノートで複数回たたいた。課題ノートの提出をしなかったことに腹を立てたという。監督は暴行を認め、退職した。 全国の高校部活中の体罰は年100件前後あるが、表面化するのは一部とみられる。体罰は学校教育法はもとより、家庭でも民法や児童福祉法などで禁じられている。刑事罰にも問われかねない。 有罪の大津地裁判決が確定した近江八幡の暴行事件では、裁判官が「指導者に逆らえないことを悪用し、体格差もある無抵抗の生徒に犯行に及んでおり、卑劣で悪質だ」と厳しく指摘した。 スポーツ関係団体が暴力根絶を宣言したのは2013年。大阪市立高の運動部主将が、顧問からの体罰を苦に自殺。柔道女子日本代表への暴力指導の発覚もあった。 各団体で相談窓口の設置や指導者研修などが進んだ。しかし、暴言や無視など陰湿化、練習の撮影禁止など密室化がみられ、相談件数は増加傾向という。 元ラグビー日本代表で、スポーツハラスメント・ゼロの運動などに取り組む平尾剛氏は「殴られ、罵(ののし)られて上手(うま)くなるほどスポーツは甘くない。暴力行為を伴うほどの厳しさなどまったく不要」と本紙寄稿に記す。指導者、競技者、周囲とも暴力は許されず、断じて許さないとの認識を徹底したい。