イギリスのウィンストン・チャーチル元首相の生家のブレナム宮殿で2019年9月に開かれた美術展から、時価480万ポンド(当時の為替レートで5億円超)の「黄金のトイレ」が盗まれた事件の裁判で、ギャングのメンバーらに18日、有罪評決が言い渡された。 評決などによると、窃盗団はオックスフォードシャー州のブレナム宮殿に、美術展の開幕パーティーの数時間後に侵入し、黄金のトイレを盗み去った。トイレは使用できる状態だった。 マイケル・ジョーンズ被告(39)は侵入窃盗を計画した罪で、フレッド・ドウ被告(36)は金の売却を共謀した罪で、それぞれ有罪判決を受けた。ボラ・グコック被告(41)も金の売却を共謀した罪に問われたが、無罪とされた。 窃盗団の首謀者とされたジェイムズ・シーン被告(40)は昨年、有罪を認めた。現場で警察が同被告のDNAを発見したほか、同被告の衣服から金の破片が見つかっていた。裁判では、盗品の譲渡や侵入窃盗などの罪に問われた。 シーン被告は2005年以降少なくとも6回服役しており、詐欺と窃盗で500万ポンド以上を稼いだ組織犯罪グループを率いてきた。盗んだお金のほとんどは、当局が回収できていない。 監視カメラには窃盗をはたらく5人が映っていたが、逮捕に至ったのはシーン被告とジョーンズ被告の2人だけだった。 裁判では、窃盗団が黄金のトイレの美術品「アメリカ」を盗んだあと、数日のうちに解体し、売却したことが明らかになった。金はまったく回収されていない。 裁判ではまた、窃盗団がパーティーの招待客が帰った数時間後、盗んだ車2台で宮殿の門を突き破り、窓を破壊して侵入したことも明かされた。レンチでトイレを外し、宮殿から転がして外に出したとされる。 BBCは取材で、宮殿のセキュリティーに欠陥があり、窃盗団はそれに乗じたことをつかんだ。当時、美術展や敷地をパトロールする警備員はいなかった。盗まれた美術品は一晩中、薄い木製のドアの後ろに置かれ、監視カメラは向けられていなかった。 警報が鳴って5分以内に警察が到着したが、窃盗団はすでに立ち去っていたとされる。 重さは98キロで、600万ドルの保険がかけられていた。使用されていた金だけで280万ポンド相当の価値(2019年9月時点)があったことも、公判で明らかになった。 窃盗団がいつトイレを細かく壊したのかや、自分たちで金を溶かしたのかなどは、正確にはわかっていない。しかし裁判では、シーン被告が窃盗から2日以内に買い手を探し、金の売値として1キロ当たり約2万5500ポンドを提示したことが明らかにされた。 評決を受け、検察のシャン・ソーンダース氏は、今回の犯行は「慎重に計画され、実行された」とコメント。「しかし、犯人の注意は不十分で、科学捜査、監視カメラ映像、電話データなどから証拠が見つかった」と述べた。 また、「金はまったく回収されなかった。盗まれた後、すぐに解体されたか、溶かされて売られたのは間違いない。私たちは今回の訴追が、より広い犯罪とマネーロンダリング(資金洗浄)のネットワークを崩壊させる役割を担ったと確信している」とした。 (英語記事 Gang guilty over £4.8m gold toilet heist)