入居審査を不正に通過させる「アリバイ会社」はなぜなくならないのか?

【不動産業界 噂の現場】 賃貸住宅の入居審査を不正に通過させる「アリバイ会社」を使った事例が相次いで発覚している。 アリバイ会社とは、入居希望者の身分証明書や在職証明書などを偽造し、入居審査をすり抜けるために使われる業者のこと。 今年2月、偽造した保険証を使って賃貸物件の契約をした都内の不動産仲介業者らが逮捕された。報道によると、容疑者は「ホストなどが主な客で、アリバイ会社を使うことで入居審査が通りやすくなると思った」と供述。これまで7年間で約500回の偽造を依頼したという。 アリバイ会社の多くはダミー会社を所有し、そこに在職しているとする書類を作成する。表向きは依頼を受けて書類を作成しただけで、利用方法には関知しないというグレーゾーンで営業してきた。 料金は家賃の30~50%だったり、書類作成だけや電話での口裏合わせまでするなど、業務ごとに細かく設定されたりする。 ■90年代から存在、外国人入居者の増加で拡大傾向に アリバイ会社自体の歴史は古く、少なくとも90年代から存在しており、審査に通過しにくい高級物件や、水商売やフリーランスなど大家に避けられがちな職種の人向けに利用されてきたという。 最近では外国人入居者の増加に伴い、アリバイ会社の利用は都心から地方まで幅広い物件へと拡大している傾向にあると専門家は指摘する。 賃貸住宅仲介会社にオーナーなどから支払われる手数料は入居が決まってからの成果報酬のみ。よい部屋を探し出しても審査落ちとなれば1円にもならず、何とかして審査を突破し、ねじ込みたいという思惑が働く。 一方で、物件オーナーや管理を担当する管理会社、賃貸保証会社にとっては大問題だ。はなから身分を偽ってくる入居者は、その後の生活マナーなどで後々大きなトラブルにもつながることも考えられる。もし、後から不正が発覚しても、退去させるコストは高い。そのため、大手不動産会社の中には入居審査のために探偵まで雇うこともあるという。 都内の不動産管理会社も昨年、被害にあった。「家賃20万円の物件に入居した人物が、契約後に一度も家賃を支払わないまま居座り続けた。調査の結果、入居審査時に提出された在職証明書類は偽造されたものだと発覚した。取りっぱぐれた家賃は200万円近い。会社の借り上げ物件なので丸損」と嘆く。 東京の繁華街近くで賃貸仲介店を営む人物は「全部をアリバイ会社でねじ込むわけではない。収入もあって、信用できる人でも水商売なら一律禁止、といった柔軟性がない審査基準にも問題がある」と主張する。 フリーランスなど信用証明の難しい人に向けた賃貸保証サービスも出てきたが、まだ発展途上。多様な働き方が広がるなか、従来型の入居審査との隔たりにアリバイ会社が栄える余地があるようだ。 (小野悠史/ニュースライター)

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