昭和大病院元医師の論文に疑問、医学誌掲載後削除
2009年11月21日9時5分配信 読売新聞
世界的に権威のある医学誌に掲載された、昭和大学藤が丘病院(横浜市青葉区)の50歳代の元内科医師による論文が、信ぴょう性が低いとして削除されたことが20日、わかった。
倫理委員会の承認を得ていなかったうえ、生の研究データが確認できないという。
論文は、2003年1月11日付の英医学誌「ランセット」に掲載された。腎臓病の治療に、1種類の薬を使う通常の方法と、2種類の薬を組み合わせる方法で、有効性や安全性を比べた。
掲載後、データの信ぴょう性に疑問の声が上がり、ランセット誌が昨年8月、同病院に調査を依頼。同病院は、医師からの聴き取りや、臨床試験を行った民間病院のカルテなどを調べた。
その結果、症例の生データが見つからず、分析データに不審な点があった。分析や論文執筆は同医師が一人で行い、共著者の教授らにも無断で論文を提出していた。また、論文の記述と違って、臨床試験の当初に民間病院の倫理委員会で承認を受けておらず、患者の同意文書がない例もあった。
調査報告を受けて、ランセット誌は先月、論文の削除を決めた。
医師は01年7月〜03年3月に藤が丘病院に所属していた。同病院は「今後、このようなことのないようにしたい」としている。