仙台大漕艇部員が女性に暴行 監督は大学に報告せず
河北新報 2021/5/24(月) 6:00配信
仙台大漕艇部の男子部員が2020年11月、宮城県仙南地方で女性に暴行するわいせつ事案を起こしていたことが、河北新報社の取材で分かった。監督の男性教授(58)は事実関係を把握しながら大学に報告していなかったといい、大学側は調査する方針。
複数の関係者によると、男子部員は20年11月6日、仙南地方の公園のトイレで女性に襲い掛かったという。女性にけがはなく、被害届は出していないとみられる。
漕艇部は数週間後、寮で監督や部長、部員らが参加したミーティングを開催。問題を起こした部員が「軽率な行動で起こしたトラブルでチーム全員に迷惑を掛けて申し訳ない」と謝った。
河北新報社が入手した録音データによると、監督はミーティングで「とても残念なことが起きてしまった。非常に遺憾」と語り、問題を隠そうとした部員を「悪いことを隠せると思ったら大間違いだよ」と諭した。
一方で「僕はこの件について触れないことになっている。知らないことになっているんだから」と責任回避とも取れる発言もしていた。
監督は河北新報社の取材に「漕艇部で起きていることは全部大学に報告している。(事案が)暴行かどうかは私には分からない。警察ではないので、本当に何があったのかは知らない」と話した。
大学側は異なる見解を示している。取材に対し「(取材で)指摘されるまで大学側は事案を知らなかったが、漕艇部に確認して概要を把握した。今後、詳しく調査して事実確認したい」と答えた。
仙台大漕艇部は20年のボート全日本大学選手権で男子が総合優勝した強豪。漕艇部を巡っては、部員だった男子学生が19年に監督の教授から継続的にパワーハラスメントを受けたとして、監督と大学に約4400万円の損害賠償を求める訴えを松山地裁今治支部に起こしている。
責任を取らない責任者なら存在する意味ないよな
1984年ロサンゼルス大会など五輪ボート競技に3大会連続出場し、日本代表のヘッドコーチ(HC)も務めたが学生にパワーハラスメント行為を指摘されていたことが、河北新報社の取材で分かった。学生は深刻なストレス障害を発症して大学に退学届を提出した。
■重度ストレス障害に
学生は現在、愛媛県内の実家に戻っている。大学側とに約4400万円の損害賠償を求める訴えを、松山地裁今治支部に起こした。
訴状などによると、教授は2019年4〜9月、部活でミスをした学生に「君はばかか」「君の頭は腐っているんだ」「お前のようなコックス(舵手)は必要ないんだよ」と怒鳴りつけたり、ささいなことで部員全員の前で謝罪するよう強要したりした。
監督の部屋に呼び出した際には、ノックや返事の仕方などに難癖を付けて机をたたきながら説教し、約20分間立たせて放置したこともあった。
恒常的な叱責(しっせき)によって学生は教授を前にすると動悸(どうき)や過呼吸気味になり、19年10月に退学届を提出。その後、重度ストレス反応と適応障害と診断され、20年12月に精神障害者保健福祉手帳(2級)の交付を受けた。「一般就労継続が困難なレベル」という。
学生は「監督は五輪選手であり、コーチでもあったので信用していた。裏切られた。自殺を考えるほどつらかった」と話す。
教授はし、12年ロンドン五輪では日本代表のHCを務めた。仙台大でスポーツ指導の基礎などを学生に教え、アイリスオーヤマのボート部では五輪代表の指導にも当たる。
教授は河北新報社の取材に「裁判を通して(事実関係を)明らかにする」と回答。松本文弘副学長は「学生と見解が異なる部分がある。裁判で明らかにしたい」と語った。