駆け込み退職「私には出来ない決断」と語る教諭
2013年1月26日11時45分 読売新聞
今年度で定年退職の公立学校教員らが退職手当削減前の「駆け込み退職」を申し出ている問題を巡り、さいたま市立中学校の男性教諭(60)が25日、読売新聞の取材に応じ、削減が伝えられたときの状況や、学校に生じている動揺などについて、詳細に語った。
この教諭は、自身は3月末まで勤務して定年退職すると決めているが、「(前倒しで2月より前に)辞める決断をした先生は今、針のむしろだ」と心配し、「今後の現場の混乱の責任まで、辞めた先生のせいにされたら、納得がいかない。結果的に現場の士気を大きく下げたのは確かだ」と、制度自体に疑問を示した。
やりとりは以下の通り。
――退職手当が減ることをいつ知ったか。
「組合を通じ、昨年11月末には知っていた。正式に校長から説明があったのは昨年12月21日。『1月11日までに決断してください。(前倒しで)辞めるか辞めないかは自由です。代わりの人間は必ず出します』と言われた」
――どう感じたか。
「達成感を感じていた定年退職の間際に減額というのは、正直、残念な思い。県が財政事情をくわしく説明して、協力を求める姿勢を見せるならまだしも、資料は制度の説明を書いたA3の紙1枚だけ。『教師は、生徒がいるから辞めないだろう』と、足元を見られているように感じた」
――3月末まで辞めない決断をした理由は。
「これまでいた現場で、病気で休職する先生がいたが、代わりはなかなか来なかった。2月から2か月間だけ勤務する教師を急に確保できるとは信じられず、辞めるわけにはいかないと思った。来年度の先生に引き継ぐためにも、2月というのは大詰めを迎えた重要な時期。仕方がない」
――1月末の退職についてどう思うか。
「私には出来ない決断。気持ちの上では、3月末まで勤めた方が気は楽だ。生徒を最後まで見届けたいという思いだけでなく、保護者に『投げ出している』と批判されるのでは、など他人の目が気になる部分も大きい。1月末で辞める先生の数は、自分が予想していたより多い。金よりも、現場を考えていない制度に対する怒りが、相当大きかったのだろう」
――教師の入れ替わりはスムーズに行くか。
「教育現場に他人の仕事を背負う余裕はない。特に中学校の教諭は皆、週20コマくらいは授業を担当しているため、急に代わりは出来ない。2月上旬は、自習など、生徒にとって空白の時間がどうしても生じるのではないか。生徒にマイナスになるのは確実だ」
(矢野由希子)