昨年、全国で資金獲得のための犯罪で摘発された「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」のメンバーが、1万人を超えたことが、警察庁が初めてまとめた統計で明らかになった。 交流サイト(SNS)などを悪用した手口は多様化し、凶悪化や国際化も進んでいる。「新たな治安の脅威」として、国や警察はもとより、社会全体で向き合う必要があろう。 トクリュウは近年のインターネットや通信技術の進化に乗じて裾野を広げた。高額報酬をうたう「闇バイト」として、SNSを通じて実行役を集め、互いに顔を見知らぬまま犯行に加わるケースが多い。統計では闇バイトに加わったのは、4千人近くを数える。若者ら一般人が使い捨てにされる構図が浮かぶ。 摘発された犯罪のうち五つの主な罪種は詐欺が最多で、窃盗、薬物事犯、強盗、風営法違反と続く。 京都では2022年、京都市中京区で「ルフィ」と名乗る指示役による強盗事件が起き、SNSで闇バイトに応募し、犯行に加わったとして男女が逮捕された。昨年から今年にかけ、屋根を点検した後に不安をあおって高額な工事契約を結ばせる「点検商法」を繰り返したとして大阪市の業者を京都府警が摘発した。 滋賀では、他人のクレジットカード情報で家具を不正に購入したり、マンションの工事現場から銅線などを盗んだりした事件が発生している。 問題は、摘発された大半が「末端」にとどまることだ。 5罪種の摘発者約5200人のうち、9割近くは現場の実行役で、中心にいる主犯・指示役は600人超に限られる。 秘匿性の高い通信アプリを使って表に出ないため、警察が暴力団などの組織犯罪対策に用いる手法では限界がある。対応が後手に回った面は否めない。 警察庁は昨年4月、都道府県警が連携して広域捜査する「連合捜査班」(TAIT)を設けた。 ミャンマー東部にある特殊詐欺拠点など、海外で活動するトクリュウの存在が明らかになった。 関わりが指摘される違法オンラインカジノも新たな問題として浮上する。外国の捜査機関との連携強化は欠かせない。 SNSが闇バイトの勧誘窓口とされる実態を踏まえ、運営事業者には歯止めをかける責任や役割も求められる。政府も法規制の強化を視野に検討を急ぎたい。