江戸初期の遊郭以来、350年の歴史を持つ国内最大のソープランド街、東京・吉原(台東区)で、経営者たちがスカウトとの関係を絶ち始めている。 背景にあるのが、今年に入って本格化した警察当局によるスカウトグループの摘発だ。今国会では、女性らを性風俗店に紹介するスカウトへの仲介料の支払いを禁じる改正風営法の成立が見込まれ、「多くの店がスカウトを使ってきた」(ソープランド業界団体)という吉原でも、かつてない危機感が広がっている。 「スカウトとの関係を即日遮断するように」 1月、吉原のソープランド経営者でつくる「東京特殊浴場暴力団等排除推進協議会」の河村良人会長は、警視庁幹部から強い口調で指導を受けた。 その直前、警視庁は大規模スカウトグループ「アクセス」を取り締まる特別捜査本部を設置。性風俗店に女性を紹介したとして幹部を職業安定法違反(有害業務の紹介)容疑で逮捕した。 「警察の警告は本気だと受け取った」と河村会長は話す。 スカウトグループは、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)と呼ばれる犯罪組織に連なり、違法な職業あっせんの温床になってきた。 長くスカウトから女性の紹介を受けてきたソープランド経営者は「店の経営で最も大切なのは女の子(女性従業員)の確保。どうしてもスカウトに頼る面があった」と打ち明ける。だが摘発を恐れ、1月以降にスカウトとの縁を切ったという。 河村会長によると、144店ある吉原のソープランドで「6割くらいはスカウトを使ってきたのでは」という。 一方、3月に閣議決定された改正風営法案では、スカウトに仲介料を払う「スカウトバック」を巡り、支払う店側への罰則規定が新たに盛り込まれた。トクリュウ捜査の一環として、警察当局は1月からスカウトグループの摘発も本格化させている。 江戸時代の「吉原遊郭」が舞台になったNHK大河ドラマ「べらぼう」が放送中ということもあって、吉原はいま、当時の面影を残す街並みや遺構を目当てに観光客が訪れる街にもなっている。 東京特殊浴場暴力団等排除推進協議会は「安易に『大丈夫だろう』と考えてはいけない」とスカウトの排除を求める文書を、吉原の全店に配布した。河村会長は「まだ一致団結とまではいかないが、街全体でスカウトを排除していきたい。私たちも、今の時代に合った健全な経営をしていきたい」と話している。【春増翔太】