破産手続き前に関連会社の資産を隠したとして「詐欺破産」容疑で逮捕、起訴された再エネ開発会社の社長が手がける北海道遠軽町の大規模風力発電開発計画について、地元住民らが「社長が逮捕され不安や不信感の払拭は困難」などとして中止と撤回を求める要望書を同社へ提出した。 計画は「(仮称)遠軽ウィンドファーム事業」。東京ドーム134個分に当たる面積6・3平方キロの国有林に最大180メートルの風車12基(出力最大4万8千キロワット)を建設するもので、令和11年着工、14年営業運転開始を目指していた。 ところが、事業を手がける会社の代表社員を務める再エネ開発会社「NC電源開発」代表取締役、大山顕徳被告(47)らが今年2月、破産法違反容疑で警視庁に逮捕され、今月3日に同罪で起訴された。 住民団体は「遠軽の風力発電を考える会」(角館正勝代表)などでつくる「北海道風力発電問題ネットワーク」で、要望書は「逮捕された代表社員は『住居不詳』と報道された。計画地は国民の財産である国有林内で、極めて公共性の高い発電事業を安全かつ継続的に行うことに対し、住民の不安や不信感を払拭するのは極めて困難」などとしている。2月22日に予定されていた住民説明会も中止されたという。 今月3日に要望書を郵送したところ、15日付で文書で回答があり「事業の今後の予定については、対応方針が決まったらホームページ(HP)で発表いたしま(原文のママ)ので、恐れ入りますがHPをご確認いただければと存じます」とだけ書かれていたという。 この事業は環境影響評価(アセスメント)の第1段階に当たる「配慮書」は省略され昨年9月、第2段階に当たる「方法書」が出されていた。これは風力発電の新設時に環境アセスを義務づける対象が令和3年10月、「出力1万キロワット以上」から「5万キロワット以上」に規制緩和されたため。 この規制緩和は、河野太郎規制改革担当相(当時)が主宰した再エネに関する規制見直しを目指す内閣府のタスクフォース(大林ミカ氏ら民間構成員、廃止)がその前年、再エネ拡大に向け事業者側の要望を踏まえて求めたものだった。