非常戒厳をめぐり、韓国史上初めて逮捕された尹錫悦大統領。弾劾裁判の行方や、国内での分断の深刻化、次期政権を見据えた日韓外交や経済の重要ポイントをエコノミストと韓国を取材した記者が探りました。 ■与野党支持率逆転の背景に「左派の党利党略」 「尹大統領が身柄を拘束されているので “欠席裁判”で進むことになります」第一生命経済研究所の主席エコノミスト・西濵徹さん(新興国担当)は、弾劾裁判について、こう解説します。 「とんとん拍子で審理が進む可能性はありますが、一方で大統領が不在で徹底抗戦できない状態が続き、裁判の中身が煮詰まらない可能性もある」 「今後は、大統領権限として非常戒厳を宣布したことが内乱罪に当てはまるのかが焦点でしょう。尹大統領側は、大統領はそもそも国家元首で権力者なので、内乱を起こすのは理屈としては通らない、と詰めていくことになるでしょう」 「野党・国会側は国内を混乱させた点、また非常戒厳は要件を満たしていなかったのでは、という点を法律論で攻めると見ています」 裁判が長引けばどちらに有利な展開になるのでしょうか。 「なかなか難しいところです。次期大統領選への出馬が取り沙汰される最大野党『共に民主党』の李在明代表自身も汚職疑惑などで訴訟を抱えており、自身が有罪になり出馬資格を失う前に尹大統領の弾劾裁判を早く進める狙いがあるという見方もできます」 「つまり、裁判が延びるほど野党にとって望ましくない可能性もある。こう着状態はどちらも利する環境にはならないかもしれない」 激しい政治対立、社会分断の背景には何があるのでしょう。韓国ギャラップの1月17日の世論調査では与党「国民の力」の支持率は39%となり、5カ月ぶりに野党・共に民主党の支持率36%を上回りました。国民の力が支持率を急回復させ、非常戒厳以前の構図に戻った形です。 「非常戒厳は尹大統領・与党への反発につながりましたが、その後の首相の弾劾訴追や大統領の身柄拘束は、李在明氏の立場が危うくなる前に大統領選に持っていきたい左派(野党側)の党利党略のようなものに見えてしまった。それにより分散していた右派の支持が固まったと考えています」