堀越学園・解散命令へ:消えた若者の夢/下 体育教師あきらめた男性 「思い出すとつらい」 /群馬

堀越学園・解散命令へ:消えた若者の夢/下 体育教師あきらめた男性 「思い出すとつらい」 /群馬
毎日新聞 2012年11月11日(日)13時4分配信

 ◇体育館、予定地のまま
 2年生の冬。他大学への転学を試みた。いくつかの大学に成績表を持参して相談をすると、担当職員は首をかしげた。
 「これは何ですか」。履修科目の横に記された「優」や「良」などのほか「失」の表記。実施時間が重なり、履修できなかった科目のことだった。転学しても認定されない単位が多いとも言われた。「資格を取得するためには、あと4年は大学に通わなければいけない」。転学を諦め、今の大学で頑張るしかないと腹をくくった。
 男性(23)は今年3月、創造学園大を卒業、社会、介護福祉士の資格を取得し、現在は県内の福祉施設で働く。「大学のことは思い出すとつらくなる」と、40代の母親が取材に応じた。
 母親は「卒業が先か、大学がつぶれるのが先か、賭けのような気持ちで通学を続けさせた」という。男性は08年4月に同大ソーシャルワーク学部に入学。面接入試の際、高校の教員免許と介護福祉士、社会福祉士の国家試験受験資格が取得できるとの説明を受けた。
 「三つの免許が一緒に取れる大学なんて聞いたことがない。なんでこんなことができるんだろう」。母親は不思議に思ったが、福祉職のほかに、高校で体育教師になりサッカーの指導をしたいという息子に合う大学だと考えた。
 しかし09年3月末、同学部の教職員15人のうち3分の2が突然退職。同年4月からは、教職の授業と社会、介護福祉士の授業が同時間帯に行われるようなカリキュラムに変更された。体育の実技指導講義が行われるはずの体育館もなく、空き地に「建設予定地」の看板が立つだけ。ある教員によると、大学開校時、文部科学省から「雨天用運動場」の必要性を指摘されて立てたものだという。その看板もいつしか撤去された。
 体育教員免許に必要な科目の一部は「サッカーをしていたから自動的に単位を取得できる」と学校側から説明を受けたが、結局取得できなかった。男性は教員免許を諦め、介護福祉士と社会福祉士の国家試験受験資格を取得するカリキュラムを選んだ。
 3年生になり就職活動を始めたが、創造学園大卒と明かすと、説明会さえ参加できない企業もあった。
 社会人1年生の男性は仕事を覚えようと懸命だ。しかし、解散命令が答申され、学園の報道が増えた現在でも家族の間で同大学を話題にすることはない。「創造学園大の4年間を思うと息子が可哀そうになる。『いくつも資格がとれる』というのは学生を集めるセールストークだったのかも」。母親は、そうつぶやいた。

 この連載は塩田彩、田ノ上達也が担当しました。
11月11日朝刊

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