<いじめ>認知、どうして増えた?
毎日新聞 2012年11月23日(金)17時50分配信
◇大津・中2自殺で高い関心 「仲間はずれ」「嫌がらせ」も問題視
なるほドリ 文部科学省の調査で、今年4月以降の半年間のいじめの認知(にんち)件数が昨年度1年の約2倍になったね。どうしてこんなに増えたの?
記者 今回の調査は大津(おおつ)市立中学2年の男子生徒の自殺を受けての実施です。学校や保護者の間にいじめへの関心が高まり、これまでは問題としなかった「仲間はずれ」や「嫌がらせ」もいじめと見なすなど捉(とら)え方が変わったのが理由と考えられます。
Q これまでは?
A 調査は1985年度から始まりました。件数は年々減少しましたが、94年に愛知県西尾(にしお)市でいじめを苦にした中学2年の大河内清輝(おおこうちきよてる)君(当時13歳)が自殺したことをきっかけに文科省がいじめの定義を見直しました。いじめられた子供の立場で調べるようにした結果、94年度は93年度から2・6倍に増えました。この後、件数はまた減少しますが、2006年度に大きな転機がありました。05年9月に遺書を残して自殺を図った北海道滝川(たきかわ)市の小学6年の女児が06年1月に亡くなり、いじめがまた社会問題化したのです。文科省はこの時もいじめの定義から「継続的な攻撃」や「深刻な苦痛」を外しました。その結果、05年度は2万143件だったのに対し06年度は12万4898件と急増したのです。現在は「一定の人間関係のある者から心理的、物理的な攻撃を受けたことにより精神的な苦痛を感じているもの」が定義です。
Q 精神的苦痛って?
A 給食を一人で食べさせたり言葉でからかったりするのもいじめになります。いじめ問題に詳しい国立教育政策研究所の滝充(たきみつる)・総括研究官はいじめの定義にある「精神的な苦痛」には「不安感」「恥ずかしさ」「みじめな思い」も加えるべきだとしています。
Q 解決策はあるのかな。
A いじめを把握(はあく)するため、毎月生徒アンケートを実施している愛知県一宮市立今伊勢(いまいせ)中の森義朗(もりよしろう)校長は「大きないじめになる前に見つけ、対応することが大切」と言います。子供は自ら「いじめられた」とは言いません。日常の行動や会話からいじめを発見するとともに、生徒に考えさせる予防教育も必要です。(社会部)