中学生大ヤケドで…火使った演舞を『ペンライト』にした他校 得られる“連帯感・達成感”変わらなかった
東海テレビ 2019/10/23(水) 17:21配信
名古屋市立の中学校で野外学習で披露するファイアトーチの練習中に、男子生徒が腕にヤケドをした事故。
実はこの事故を受け、野外学習で行われる演舞にある“変化”が起きていました。伝統か、安全か…何を大切にするべきなのでしょうか。
音楽に合わせて、光が弧を描く『ファイアトーチ』…。
野外学習で、先端に火を灯した棒を回して演舞し、連帯感や達成感を得ようという、愛知県では30年以上続く独特の伝統です。
しかし、使われているトーチをよく見ると…。
(リポート)
「こちらの学校で使っているトーチ棒です。先には使い捨てのペンライトが2本ついています」
名古屋市東区のあずま中学校が行ったのは、ファイアトーチならぬ“ペンライトトーチ”。使い捨てのライトを使った演舞です。
今年7月、同じ名古屋の守山東中学校で、ファイアトーチの練習中にトーチの火が中学2年の男子生徒に燃え移りました。男子生徒は右腕にヤケドを負い、大きな傷が…。
ヤケドした生徒の父親:
「やっぱり新たな被害を出さないためにも、義務教育のなかでファイアトーチをやることに対しては反対です。連帯感や感動を得られる行事やイベントはほかにもいっぱいありますし、無くしてしまった方がいいとは思っています」
“ファイアトーチは無くしてしまった方がいい”、そう語るのは男子生徒の父親です。事故から2カ月あまり、男子生徒は心にも大きな傷を負ってしまっています。
ヤケドした生徒の父親:
「どうしてもひきこもりがちになってまして、外に出る時もヤケドの痕が見えないように、長袖を着て出ていくような状態が続いてますね」
その後の調査で、消火用のバケツを適切に配置していなかったなど、学校側の安全管理に不備があったことが発覚。さらに、事故を教育委員会に報告していませんでした。
ヤケドした生徒の父親:
「事故が起きても報告がなかったりとか、そういう管理体制がなってない中でそれを『文化』ということに対しては、ちょっと疑問しかないですね」
名古屋市教育委員会は今年8月、火を使ったトーチの演舞を、今年度禁止とする通知を市内すべての小中高校に出しました。
ペンライトを使っていた中学校も、もともとは火を使う前提で練習をしてきました。ファイアトーチ禁止の通知に、生徒からは不安の声も上がったといいます。
校長:
「(生徒は最初)『ええー?』です。これまでの練習はちゃんと役に立つんだろうか…ということで」
では、なぜ中止にせずに演舞を続けることに決めたのでしょうか。
校長:
「一生に一回のことなので同じ体験が(毎年)できるといいなと思っているし、トーチを回した子たちは、3年生になって次の2年生に『こんなによかったよ』と話しをするし。形は違うんですけど安全面を最優先に考えた形で、伝統として繋げていけばいいのではないかなと思っています」
火を使わない演舞は、2本のライトをトーチの先に輪ゴムとセロテープで固定して行います。しかし固定が甘いと、遠心力でライトが飛んで行ってしまうことも…。
ですが、火を使うより良いところもあるといいます。
校長:
「すごく手軽ですよね、準備的にも。消火のことを考えなくて良いですし…」
灯油の管理や消火用バケツの準備なども必要なく、ヤケドのリスクもありません。
初めての試みとなったライトでの演舞…。火を使った演舞と比べると、どうしても迫力は欠けてしまいますが、子どもたちが得られるモノはこれまでと変わらない様子。
あずま中学校では、来年以降も演舞を続けたい考えです。
校長:
「色んな形で子供達が楽しめば、その時代に合ったもので最高の思い出を作れば良いと思っているので。それを工夫するのがわれわれ学校だし、一緒に子供たちと考えていければいいなと思っています」
伝統か、それとも安全か…。男子生徒の父親は、火を使わない対応を評価しつつも、複雑な心境をのぞかせます。
ヤケドした生徒の父親:
「トーチを楽しみにしてきた子ども達がいるということも僕は知ってますので、さみしい思いをさせているなとは感じるんですけども。ただそのさみしい思いをさせてしまったのは、やっぱり危機管理のなっていない大人たちのせいなので。本当に文化であればそれを守るために安全管理をきちんとすべきだし、とにかく子どもたちに危害が加わらないようなイベントであればいいかなと思っています」