教員間暴力 「子ども思い通りに動かせる」教諭が赤裸々に語る、学校現場の閉鎖性
神戸新聞NEXT 2019/11/25(月) 13:45配信
神戸市立東須磨小学校(同市須磨区)で起きた教員間暴行・暴言問題を、同じ兵庫県内の先生たちはどう受け止め、背景に何を見たのか。公立中学校の教諭2人と元校長1人に、職員室の人間関係など教育現場を巡る状況について語ってもらった。
<<出席者>>
A教諭(30代男性)民間出身で神戸市立中学校勤務
B教諭(30代男性)姫路市立中学校勤務
C元校長(60代男性)県内公立中学校に勤めていた
−今回の問題をどう受け止めたか。
A教諭 一部の加害教員と同年代だが、後輩に対して行う行動ではないな、というのが率直な印象だ。神戸や教師という仕事のブランドを失墜させた。若い人が神戸の教職を選ばなくなって、それが人材の枯渇につながり、結果的に子どもたちに影響が返ってくることを心配している。
B教諭 僕が教える生徒たちも「先生、それパワハラちゃうん?」「いじめちゃうん?」と言ったりして、すごく悪影響になってる部分がある。
C元校長 加害行為の内容が低レベルで驚いた。先生がこういうことをするのか、と。
−問題はなぜ起きた?
C元校長 きっかけは悪乗りか、被害教員を指導しようと思ったのか。管理職や周りの先生がもっと早く止めていれば、これほど大ごとにならなかった。
A教諭 公務員で身分が保障されているという甘えが根底にあるのでは。評価者がそばにいれば、素行もパフォーマンスも抑えが利き、目も行き届くと思うが、先生は身近な所にそうした上司がいない。管理職の校長、教頭は2、3年で代わるから、(長年同じ学校に在籍する)40代くらいの先生の方が発言力があるということもあり得る。
B教諭 評価の面で言えば、自分の授業やクラスに対して評価されることがあまりなく、子どもに言いたいことが言えて、思い通りに動かせる状況がある。(学級担任制の)小学校は特にそうだと思う。「俺がやってることは正しい」と変な捉え方をして、調子に乗った部分もあったのでは。
■職員室の人間関係
−「職員室カースト(序列)」や「若い教員がものを言いにくい」など、先生同士の人間関係も注目されている。自分の職場と照らし合わせてどうか。
B教諭 若い教員が声を上げにくい状況はどこの職場も同じだと思う。(中学の場合)部活に力を入れている学校は、部活で成績を残している人が発言力を持っていて、不満があってもなかなか言いづらい。
A教諭 教科指導も生徒指導も、力量がある先生の方が発言力がある。力量とは、生徒の支持や保護者の信頼があるということ。若い先生でも、授業が上手で生徒指導ができれば発言力はある。民間企業で営業成績がいいとか顧客満足度の高い社員が評価されるのと同じ。その学校にどれだけ在籍しているかという経験がものをいう面もあり、在籍期間が長いほど生徒や保護者から信頼される。
C元校長 授業が上手ではない先生を皆で指導していると、その先生が強く言われたり、言われ続けたりすることも。ちょっと悩んでいるかな、と感じたことがないわけではない。
−加害教員には、いわゆる体育会系で子どもに強い態度で臨み、中核と評された教員も。教室を落ち着かせるため、そんな先生が重宝される状況があるのか。
C元校長 それはあったりなかったりだ。良い方に出る場合もあれば、悪い方に出る場合もある。
A教諭 保護者のニーズが多様化し、「厳しく叱ってほしい」という親もいれば、共感や傾聴に力を入れてほしい親、学力向上や進路指導を求める親も。体育会系の先生が必ずしも高い地位にいるわけではない。
B教諭 前の学校は全体的に「生徒の話を聴こう」という雰囲気だったが、今の学校は体育会系で生徒に強く言う人の方が力を持っている。地域や学校によって全然違うと思う。
■神戸方式
−校長同士で教員の異動を決める「神戸方式」についてどう思うか。
A教諭 各学校で教育課題は違い、それぞれの学校が求める人材を取りに行くのは、僕は悪くないと思う。ただ、民間企業にいた身からすると、異動希望の有無を本人が選べて、それが通ってしまうのは違和感があるし、今回の問題とも関係している気がする。
校長は2、3年で代わるから、権力がずっと続くようなことはない。でも、問題があって評価が低い先生でも、その人が「異動希望なし」と答えたら同じ学校に残る。(学校に残り続ける)正規のベテラン組と非正規を含む若手で二層化し、ベテラン組が若い先生に情報を下ろさないということもあり得るのでは。
C元校長 自分が勤めていた自治体では、異動前に私と教育委員会との話し合いがあったが、ほぼ聞いてくれない。先生たちの希望をかなえてあげたいので、一生懸命伝えてはいたが。
−学校の閉鎖性を問題視する声もある。
A教諭 社会のトレンドや世の中が求めているものに対して、それほど敏感でない先生がやはり多い。「閉鎖的」「保守的」と言われるが、意図的にそうしているのではなく、評価対象にならないので外の社会にオープンである必要がないということではないか。
B教諭 日々関わるのが子どもと保護者だけで、凝り固まった考えになるのは仕方ない部分も。「一般社会を知らない」と言われても、われわれは外の社会と関わる機会がゼロに等しいので、そもそも一般社会が何か分からない。そこは焦りのようなものも感じる。
−学校の信頼を取り戻すためにどうすればいいか。
C元校長 児童生徒の教育という目的を一人一人の先生がしっかり理解し、自分の行動にも気を付けていくことしかない。
B教諭 東須磨小では、子どもたちや保護者、地域に丁寧に説明してほしい。先生同士の団結や仲の良さを子どもに見せていくことも大事。先生同士がバラバラだと、子どもたちもバラバラになってしまう。
A教諭 一人一人の子どもや保護者と、頻繁な家庭訪問など親身に手厚く、積極的に関わっていくのが、神戸の教育の良い所。教育は『共育(きょういく)』とも言われるが、教育者である以上、われわれも学び続けないといけないし、子どもの模範にならなければいけない。そういう意味で今回の問題はすごく残念。先生それぞれが、自分の教育観を見詰め直すことが必要ではないか。(まとめ・長谷部崇)
【東須磨小教員間暴行・暴言問題】神戸市立東須磨小の30〜40代の教員4人が、20代の若手教員4人に暴行や暴言、セクハラを繰り返していたことが発覚。被害教員の一人は療養を余儀なくされ、須磨署に被害届を出した。同市は加害教員4人の給与差し止めを念頭に条例を改正し、市教育委員会は10月31日、諮問した審査会の異論に反してこの4人を分限休職処分とした。市教委が設置した弁護士による調査委員会は年内に結果をまとめる方針で、兵庫県警は暴行や強要容疑などを視野に捜査している。