神戸教諭いじめ 解説(下)前校長「俺を敵に回すのか」壊れた人間関係

神戸教諭いじめ 解説(下)前校長「俺を敵に回すのか」壊れた人間関係
産経新聞 2020/2/21(金) 20:33配信

 神戸市立東須磨小で教諭4人が同僚をいじめていた問題で、事実関係や組織的な背景について調べていた調査委員会が21日提出した調査報告書は、前・現校長の責任や、まるで学級崩壊ともいえる職員室の状況を指摘した。

 ■校長2人の責任

 その異常な関係性に、周囲はなぜ気づくことができなかったのか−。神戸市立東須磨小の教諭いじめ問題で、調査委員会が「最大の疑問」としたのが、被害教諭(25)に対する日常的なハラスメントが長期にわたり温存された背景だった。報告書はこの点について「(いじめを)容認・助長するような空気がこの小学校にはあった」と結論づけている。

 調査委がまず指摘したのは校長の責任だ。平成30年度の前校長は「統率力があり、頭が切れる」と高い評価がある一方、強権的という意味で「プチヒトラー」とも呼ばれていた。

 前校長は懇親会を欠席しようとした被害教諭に「おまえ、俺を敵に回していいんか。泥を塗るのか」と出席を強要するなど2件のハラスメント行為を認定されており、被害教諭は「前校長に被害申告したら、逆につぶされるという恐怖があった」と述べた。

 31年度からの現校長は一転して「非常に気遣いをする温和な性格」(報告書)だったが、加害行為の中心だった30代の男性A教諭らは校長を軽視するような態度をとり、いじめがエスカレートするようになった。

 現校長は31年7月、被害教諭からハラスメントの申告を受けたものの、報復を考慮せずに漫然と加害教諭らを口頭で注意。このため「おまえに話しかけたらパワハラになる。謝るんやったらなんぼでも謝ったる」と、被害教諭が逆恨みされる状況を招いており、報告書は「対応に大きな不備があり、非難に値する」と指弾している。

 ■暴言、下ネタ飛び交う職員室

 また東須磨小特有の問題として、男性教員と女性教員の比率に偏りがあり、約7割が女性教員だったことを挙げ、こううしたいびつな教員構成の中で、男性のA教諭ら一部の者が力を持つようになったとした。

 さらに学年担任の教員と音楽などの専科教員との間に感情的対立があったことにも言及。こうした人間関係の中で、同小の職員室には「死ね」「カス」といった暴言や下ネタが頻繁に飛び交い、「まるで幼稚で、洗練された職場環境であるとうてい言いがたい」(報告書)という空気が漂うようになった。

 調査委はこれら学校の問題を挙げる一方で、神戸市教育委員会が介入できたかどうかについては、具体的なハラスメントの報告がなされていなかったとして踏み込まなかった。

 ただ、市教委の研修メニューにハラスメントに特化したものがなく、加害教諭らが「適切かつ実効的なハラスメント教育をほとんど受けていなかった」と、体制的・制度的な不備が原因の一端だったとしている。

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