プロサッカー選手育成の理念はどこに… 神村学園通信制訴訟は長期化へ
産経新聞 2020/5/31(日) 19:00配信
鹿児島県のスポーツ強豪校「神村学園」高等部などが、プロサッカー選手育成を旗印に開設した兵庫県淡路市の通信制教育サポート校の運営をめぐり、原告の元生徒側と被告の学園側、運営業者側との法廷闘争が激しさを増している。「適切な学習指導が行われていない」などと訴えた元生徒側に対し、学園側は請求棄却を求め、業者側も勉強が進まなかったのは「生徒らの拒否反応」が理由だと真っ向から反論。審理は長期化する見込みだ。(神戸総局取材班)
■和解目指したものの…
問題が起きたのは、神村学園と業務委託契約を結んだ地元業者が、昨年4月から運営する教育サポート校「淡路島学習センター」。整った練習環境下で寮生活を送り、プロサッカー選手を目指しながら最短3年間で高校卒業資格を得るはずだったが、1期生22人のうち、10人が8月末までにセンターを去った。
元生徒ら10人のうち9人とその保護者は、高卒資格取得に必要なリポート作成のための指導がなされず、粗末な食事が原因でわずか数カ月で体重が約10キロ減ったなどとして、12月に約2131万円の損害賠償を求めて学園側と業者側を松江地裁益田支部に提訴した。
これを受け、学園側では神村裕之理事長が記者会見を開き、「誠意を持って対応する。話し合いによる解決を目指したい」と説明。元生徒側には学園の責任にも言及した上で、和解を目指すとしていた。
しかし、松江地裁で開かれた今年3月の第1回口頭弁論では一転、請求棄却を求めた。
■指導で体重「適正」に
訴訟で学園側は、地元業者に元生徒らの学習支援を委託し、運営を一任していたとして、「センター側への指導・監督権限がない」と主張。プロサッカー選手の育成事業や寮生活に絡むトラブルについては、学園は無関係と突き放した。
センターでは生徒らに日ごろから学習機会を設け、リポートを作成させて学園側に提出。スクーリングと呼ばれる学園本校での授業や試験を経て単位が認定される仕組みだった。
「教科書の配布もなく、学習の機会はなかった」。元生徒らはこう主張するが、業者側の言い分は食い違う。
業者側が地裁に提出した書面によると、元生徒らの入校直後にリポートの作成指導を試みたものの、「サッカーに打ち込むために入校した生徒らの学習に対する拒否反応が強かった」ことなどから5月のサッカー大会後に延期され、6月に指導したという。実際にリポートが学園側に提出されたのは、10人がセンターを辞めた後の9月だった。
食事が粗末だったとの主張も否定した。体重の激減については「適切な食事とトレーニングによって、当初は過多であった体重が適正体重となった生徒がいる可能性はある」と説明している。
■学園の動きに違和感
学園側は元生徒らの提訴を受け、京都市の別の教育サポート校の職員を派遣し学習の確認に当たらせるなど運営改善に乗り出した。
淡路市によると、今年に入って神村理事長本人が同市の門康彦市長のもとを訪れ、廃校となった小学校の旧校舎をセンターの学習用スペースとして使用できないか提案。年間約133万円でセンター側に貸し出す方向で交渉がまとまりかけたが、3月以降頓挫している。
一連の学園側と市側の交渉について、元生徒側の一部は違和感を覚えている。
元生徒の父親は「訴訟でセンター運営を業者側に一任していると言いながら、旧校舎の貸し出しを学園理事長本人が依頼するのはおかしい。訴訟でも責任逃れをせず、真摯(しんし)に向き合ってほしい」と憤る。
地裁での今後の審理では、証人尋問の実施が想定されている。ただ、当事者が20人を超えることなどから、審理は長期化するとみられる。