全柔連が「暴力根絶宣言」を発表 中学柔道部顧問の障害事件受け「愛のむち」容認せず
デイリースポーツ 2020/10/30(金) 16:30配信
全日本柔道連盟(全柔連)は30日、兵庫県宝塚市の中学校で柔道部顧問が部員の1年生男子2人に柔道技をかけて背骨を折るなどの重軽傷を負わせて傷害容疑で逮捕されたことを受け、「暴力行為根絶宣言」を発表した。「今回の事件を重く受け止め、柔道関係者に注意を喚起するとともに、このような行為を行った者には厳しい処分を行うなど、再発防止に努めて参ります」との声明を出した。
全柔連は、2012年に女子日本代表で暴力行為が発覚したことに伴い、13年8月に「暴力行為根絶宣言」を出していた。
今回、宝塚市の中学校では、柔道部の顧問教諭が校内の冷凍庫で保管していたアイスを部員の生徒2人が無断で食べたとして立腹し、投げ技や絞め技を連発して負傷させた。生徒の1人は失神した後もビンタで起こされ技をかけ続けられたといい、胸椎を骨折する重傷。もう1人は首の打撲などの軽症を負っていた。
柔道有段者の顧問教諭による生徒への傷害事件は社会を震かんさせた。これを受け、全柔連は山下泰裕会長の名前で「暴力行為根絶宣言」を発表し、「この事件に象徴されるように、近年、身体的暴力のみならず、言葉や態度による威嚇、人格の否定、いじめなどの行為が後を絶たず、誠に慚愧(ざんき)に堪えない」との声明を出した。
指導上のあらゆる暴力について、「愛の鞭(むち)なる言葉で美化される暴力などは、決して柔道と相いれないものである」と改めて容認しない考えを示すとともに、「本宣言発出後も暴力行為等を行った者に対しては、これまで以上に厳しい処分で臨むことを宣言する」とけん制した。
また、全柔連は今回の問題について調査する方針を示しており、今後、顧問教諭への処分が検討されるとみられる。
兵庫県宝塚市の中学校で、柔道部員の1年男子2人に柔道技をかけて背骨を折るなどの重軽傷を負わせた傷害容疑で顧問教諭の上野宝博容疑者(50)が兵庫県警宝塚署に逮捕されたことを受け、競技を統括する全日本柔道連盟も調査に乗り出し処分を検討することが19日、明らかになった。全柔連の中里壮也専務理事がオンラインで取材に応じ、「なるべく早く調査に取りかかる」と話した。
上野容疑者は9月25日、校内の冷凍庫で保管していたアイスキャンディーを部員の生徒2人が無断で食べたとして立腹。他の柔道部員の目前で柔道の投げ技や寝技を連発して負傷させた。生徒の1人は絞め技で失神した後も平手打ちで無理やりに起こされ技をかけられ続けたといい、胸椎骨折で全治3カ月の重傷。もう1人は首を打撲する軽傷を負った。
全柔連は指導における体罰や暴力行為を禁じており、違反した場合は指導者登録停止などの処分を科す可能性がある。
今回の件についても、コンプライアンス委員会を中心に調査委員会を立ち上げ、聞き取り調査などを行う見込みだ。中里専務理事は「加害者の人権もあるので(処分決定まではヒアリングなどの)手順を追わないといけない。ただ、加害者は今(警察に)身柄を拘束されているので直接面会できるか。制約がある中でいろいろ調べていく」と話した。