わいせつ教員に臨床心理士が聞き取りへ 原因分析に活用 神奈川
毎日新聞 2021/5/17(月) 18:01配信
神奈川県教育委員会は児童・生徒にわいせつ行為をした教職員に対し、臨床心理士などの専門家が面談して原因を分析する取り組みを始める。わいせつ行為で処分を受ける教職員が一向に減らないなか、実際に起きた事案から再発防止策を探る狙いがある。ただ、面談には教職員本人の承諾を前提としているため、どこまで協力が得られるかは未知数だ。
県教委は2020年度、9件の懲戒処分を下しており、このうち5件がわいせつ事案だった。具体的には公立小の教頭が電車内で女子中学生の手首に股間を押し付けたり、県立高の教諭が勤務校で女子生徒のスカート内にスマートフォンを向けて盗撮したりして、免職処分となった。
懲戒処分の全体の件数は過去15年で最も少なかったが、わいせつ事案は毎年度変わらず5〜8件で推移している。県教委は02年10月からわいせつ事案は原則免職処分としているが、目立った効果は見られないのが実情だ。
こうした状況を受けて県教委が設置した有識者会議は、4月に提出した提言で、原因について「児童・生徒が深刻な影響を受ける実態について教職員の理解が不足している」などを挙げた。一方で「元々そうした行為を起こしやすい資質(性癖)を抱えている者もいる」として、こうした教職員の対応が不十分と指摘した。
わいせつ行為をした教職員への面談は、この提言に盛り込まれた8項目の方策の一つ。専門家による面談で、わいせつ行為のきっかけや背景を分析する。結果は現場の管理職で共有するなどして、事前防止に役立てたい考えだ。
県教委によると、優秀と評価されている教員が学校外で生徒や児童にわいせつ行為をした事案が実際にあり、現状は学校内の様子から兆候を読み取ることができていないという。これまでも県教委は処分を決めるために聞き取りをしてきたが、専門的な知識を持たない職員では限界があった。
ただし、面談は教職員本人の内面に関わるため、承諾を前提としている。免職となる教職員が面談に素直に協力するかは不透明だ。担当者は「細かい気持ちの問題や性癖に関係する場合もあるので承諾は必要だと考えた。再発防止のためにできる限り協力をしてもらいたい」と話す。
8項目の方策はこのほか、教職員の倫理に関する指針等の策定▽性被害の影響について理解を深める研修の実施▽「自分を見つめるチェックシート」の作成・活用――など。県教委は提言を踏まえてまとめた21年度の「不祥事防止の取組」で、わいせつ事案の根絶を「最重要課題」と位置づけ、8項目全てを採用した。担当者は「なるべく速やかに実行に移したい」としている。【中村紬葵】