いじめ被害者に学校が直接謝罪 担任は「猛省」、学年主任は謝罪拒む

いじめ被害者に学校が直接謝罪 担任は「猛省」、学年主任は謝罪拒む
朝日新聞デジタル 2022/8/24(水) 11:00配信

 【静岡】浜松市の女性(18)が市立学校在学中に受けた重大ないじめに、学校や教育委員会が適切に対応しなかった問題で、いじめがあった当時の担任や校長ら学校関係者らが23日、市役所内で女性に直接謝罪した。

 問題を巡っては、有識者でつくる市の再調査委員会が今年3月、長年にわたる重大ないじめを認定。「市教委や学校がいじめ防止対策推進法に沿った適切な対応を怠った」と指摘する報告書を公表している。女性は学校卒業後に自殺未遂を図り、いまだに心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでいる。

 この日はまず、報道陣に公開する中で、宮崎正教育長ら市教委幹部が、女性と両親に面会。宮崎教育長は「長い間、つらい思いをさせてしまったこと、両親には心労をおかけしたことに、心よりおわび申し上げます」と謝罪した。女性は「いじめられている子や、これからいじめられてしまうかもしれない子を早く見つけてあげて、すぐ対応できる学校をつくって下さい」と話した。

 その後、非公開の場で、在学していた学校関係者4人と当時の市教委職員ら3人が面会して謝罪。7人はあらかじめ準備した手紙を女性の前で読み上げた。

 関係者によると、当時の校長は「(被害者女性の)悩みや苦しみを十分に理解し、それに寄り添うことができず、不安感や不信感を与えてしまった」、元担任の教諭は生徒と信頼関係を築けなかったことについて「(被害者の女性は)悪くありません。私が、もっと気持ちに寄り添うべきだったと猛省しています」と述べたという。女性は謝罪を聞き終わると、ひとことも発言せず退席した。

 一方、市教委によると、被害者らが謝罪を求めていた当時の学年主任は謝罪を拒んだ。再調査委の報告書では学年主任の被害者や保護者への言動について、「いじめによる苦痛を訴え出ることを萎縮させるもので極めて不適切」だと指摘しており市教委も謝罪を促したが、すでに退職しているため出席させることが出来なかったという。

 市教委は被害者の両親に対し、いじめ防止対策推進法や国の指針(ガイドライン)に沿った市の基本方針の改定や、体制の整備を進めると説明。今後、PTSDの回復や就労に向けた支援について、具体策を検討する考えだ。

 だが、被害者側の市教委への不信感は根強い。謝罪を求めてから実現まで5カ月かかったことについて、被害者の母親は「再調査委員会にも速やかにと指摘されているのに、いまだに組織を守ることを優先しているように感じる」と憤る。(大平要)

■女性が受けたいじめと学校などの対応

小学1〜5年 継続的に悪口などの嫌がらせ

2016年(中1) A中学で部活内や男子生徒からいじめを受ける

          ※PTSDを発症していた可能性

          保護者が担任にいじめを報告

          保護者が市教育相談支援センターに相談(市教委内での共有記録なし)

          B中学に転校(A中学はいじめに関連する自傷行為を把握しながら、転居による転校として対応)

2018年(中3) 保護者が市教委に相談、いじめの調査を求める

          市教委が「重大事態の疑いがある事案」と認定し調査委設置

          保護者と調査方針めぐり折り合えず、調査中断

2019年     中学卒業後、女性が自殺未遂

2020年1月   市教委が市長に調査終了を報告

     3月   保護者からの意見書を受け、市長が再調査を諮問

2022年3月   再調査委が学校や市教委の対応を「不適切だった」とする報告書を公表

(浜松市いじめ問題再調査委員会の報告書から作製)

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