いじめの対応、「教育の中立」はもう「害悪」? 内田良教授に聞く
朝日新聞デジタル 2022/12/9(金) 12:30配信
いじめが後を絶たない中、対応にあたる部署を首長部局に設ける自治体が広がる。中でも大阪府寝屋川市は、独自調査やクラス替えなどを勧告できる権限を与える条例を制定。こうした取り組みは「教育の中立性」の観点からみて、政治の介入に課題は無いのか。学校の事故やいじめ問題に詳しい、名古屋大学の内田良教授(教育社会学)に聞いた。
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――そもそも教育委員会制度は、かつて政治と教育が一体化して戦争へ突き進んだ反省から、政治が介入しない制度として作られました。寝屋川市の取り組みは、行政による教育への介入と思いますか。
実質的な介入だと思います。独自に学校への調査もできるし、市側から教委へクラス替えなどの勧告もできる。教委側は勧告に従う義務は無いとはいえ、無視もできないでしょう。
――寝屋川市の広瀬慶輔市長は「介入ではなく校舎の改修などと同じ教育環境の整備だ」と説明します。
ロジックは何とでもなります。コロナ禍で起きた一斉休校の判断も、実質的には政治的な判断でした。しかし建前としては、各地の教育委員会が判断したことになっています。
一方、介入されないことで子どもが危険にさらされるなら、「中立性」は害悪と思います。
――どういう意味でしょうか。
現状を見れば、とてもではありませんが教員だけでいじめの対応はできません。ある子どもは「被害を受けた」と言い、相手の子どもは「やっていない」と言う。そこに保護者も絡んできます。教員は、警察のような捜査や事実認定のノウハウも持っていません。すでに長時間労働も大きな問題になっています。
――「必要な介入」ということでしょうか。
やむをえない状況です。教育学者の大多数が反対するでしょうが。複雑な思いです。