論文の取り下げ、捏造519カ所、改ざん317カ所 北大が調査結果

論文の取り下げ、捏造519カ所、改ざん317カ所 北大が調査結果
朝日新聞デジタル 2023/9/20(水) 21:00配信

 データに改ざんの疑いがあるとして北海道大学の研究チームが、米科学誌サイエンスに発表した論文を取り下げた問題で、大学の不正行為調査委員会は20日、調査結果を発表した。

 問題の論文は、澤村正也教授らの研究チームが2020年8月に発表した。脂肪酸を有用な有機化合物に合成するための人工触媒を開発した内容で、反応物の構造を調べる核磁気共鳴(NMR)の複数のデータで改ざんの疑いが明らかになり、22年4月29日付で取り下げた。

 調査結果によると、調査対象となった主な論文は4本。筆頭筆者はいずれも、澤村教授が所属する北大の化学反応創成研究拠点で特任助教を務めていたフィリピン国籍のロナルド・ラゾ・レイス氏。調査委が、論文とレイス氏の実験ノートを比較検証すると、実験結果が存在しなかったり、実験結果の数値が改ざんされていたりする事例が多数発見された。レイス氏も記録しなかったことがあったことや、異なる数値を記載したことを認めたという。認定された不正行為は、4本の論文で捏造(ねつぞう)519カ所、改ざんが317カ所だった。

 レイス氏の不正の目的は不明とされたが、特任助教として雇用され、成果を出さなければという思いを抱き、インパクトのある論文を早く学術誌に掲載したいとの焦りが強くなったと推測されるという。レイス氏は2022年5月13日付で北大を退職している。

 澤村教授については直接不正への関与はないとされたが、責任著者としてデータの確認作業が不十分で、管理責任は「高」とした。今後処分を決める。(松田昌也)

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