「むしろ我慢していた」 教え子盗撮、「四谷大塚」元講師のゆがんだ思考回路 法廷から
産経新聞 2024/3/24(日) 19:00配信
中学受験塾大手「四谷大塚」で教え子の女児を盗撮するなどしたとして性的姿態撮影処罰法違反や個人情報保護法違反などの罪に問われた元講師、森崇翔(そうしょう)被告(25)の公判が東京地裁で行われている。謝罪の一方、自身が繰り返した行為の重大性を認識していないかのような発言を繰り返した被告。法廷では、「ゆがんだ思考回路」が形成された過程も明らかになった。
■仕事に疲れ「仕返し」
事件は、被告が講師として勤務していた東京都内の四谷大塚の教室などで令和5年3〜8月に発生した。
起訴状などによると、教え子の小学生の女子児童計12人の下着などをスマートフォンで動画撮影し、被告が運営する小児性愛者のグループのチャットアプリ内で、児童の個人情報付きで投稿したとされる。
被告は公判で罪を認め、「大変申し訳ない」と児童らに謝罪。被告人質問で、犯行経緯を詳細に語った。
盗撮に手を染めたきっかけは、騒がしい児童への対応などで不満をため込み疲弊していたある日、不意に低学年の女子児童の「下着が見えたこと」だった。
盗撮することで児童に「仕返しをしよう」と思い、動画撮影をオンの状態にしたスマホをスーツの胸ポケットに入れて隠し撮りし、動画を「出来心で」小児性愛者のチャットグループに送信。反響は大きく、「(メンバーの)メッセージに興奮した」という。
以来、動画盗撮とグループへの送信を繰り返すようになった被告。「(メンバーに)リアルに感じてもらえる」との理由から、一部の児童については動画に名前や住所、小学校名なども加えて共有していた。
■あえて「嫌われ役」に
法廷では、耳を疑うような被告の発言も相次いだ。
≪こんなにかわいい子を目の前にして、手を出さないのはさすがです≫被告によると、盗撮動画を共有すると、チャットメンバーから称賛の声が上がったといい「自分は我慢していると思っていた」。
犯行後、被害児童らに対しては課題を増やすなど「ほめて育てるのではなく、厳しく接した」。嫌われ役を買って出ることで「(勤務校の)成績は上がった」とし、それが盗撮した児童らへの「贖罪(しょくざい)だった」と語った。
弁護側から「事件で子供たちにどんな影響があったと思うか」と問われると、保護者が児童に短パンやスカートを着せないようになり「今しか着られない服を着る機会を奪ってしまった」、捜査がお盆の時期と重なり「(児童が)お盆休みを心から楽しめなかったかもしれない」などと回答した。
■周囲からの賛同で…
自身の行為について罪悪感を「ほとんど感じることができなかった」と振り返った被告。心の中で何が起きていたのか。
公判では、性依存症治療を専門に取り組むクリニックで被告と面会したという精神保健福祉士の男性が証人として出廷。
小児性愛者のチャットメンバーから盗撮動画への賛同を受けたことや、同じく児童の盗撮に関与していた職場の先輩=性的姿態撮影等幇助罪で罰金30万円の略式命令=が盗撮に好意的だったことから「罪悪感が薄れ、『認知のゆがみ』にいたった」と指摘した。
「認知のゆがみ」は心理学上の用語で、考え方のゆがみや、癖を指す。依存症治療プログラムはこうしたゆがみをただす「認知行動療法」に取り組むことで、依存症からの脱却を目指すものだ。
今月11日の論告求刑公判で検察側は、被告がプログラムに参加していることを考慮しても「児童が塾の先生である被告を信頼していることにつけ込んだ卑劣な行為で、非常に悪質」とし、懲役2年を求刑。弁護側は執行猶予付きの判決を求め、結審した。
被告はプログラムを通じ、認知のゆがみから脱却できるのか。判決は26日に言い渡される。(橘川玲奈)