東京女子医大理事長の元側近関係3社に1・4億円…病棟工事、5業者から

東京女子医大理事長の元側近関係3社に1・4億円…病棟工事、5業者から
読売新聞オンライン 2024/3/31(日) 5:00配信

 東京女子医科大(東京都新宿区)の関連工事を巡り、同大の同窓会組織「至誠会」元職員が運営に関与した三つの会社が、工事の元請け業者から「サポート料」名目などで1億円超を得ていたことが、読売新聞が入手した資料や関係者の話でわかった。3社からは、元職員の母親や同大の岩本絹子理事長(77)が経営する産婦人科クリニック従業員らの名義口座に約8000万円が送金されていた。

親族らの口座に8000万円

 警視庁は29日、至誠会から元職員に対し、勤務実態がないのに約2000万円の給与が不正に支出された疑いで、関係先として同大本部のほか、岩本氏と元職員それぞれの自宅などを一般社団法人法の特別背任容疑で捜索した。工事を巡る問題も把握しており、資金の流れを調べている。

 内部資料や関係者の話などによると、東京女子医大と至誠会は2014〜23年、病棟の外壁塗装や解体工事、不動産の売買仲介などを都内や大阪府の計5社に発注し、総額は計約30億円に上った。

 元請け5社はそれぞれ、元職員が関与する都内の3社と「営業協力」や「現場監理」などの名目で業務委託契約を締結。3社はコンサルティング会社などで、16〜22年の7年間に、この5社から計約1億4000万円が支払われていた。

 3社の代表取締役はいずれも、岩本氏が院長を務める江戸川区の産婦人科クリニックの女性従業員だった。元職員も同クリニック出身で、15年に至誠会に就職した後、同大に出向し、岩本氏直轄で人事や調達などを担う「経営統括部」次長として勤務していた。

 元職員は、同部で工事発注を担当する一方、3社の代表を務める女性従業員に大学の発注工事を請け負う業者を紹介したり、相談に乗ったりしていたという。

 3社からは16〜22年、給与名目で元職員の母親や女性従業員を含む同クリニックの従業員ら計6人の名義口座に計約8000万円が振り込まれていた。

 3社は15〜21年に相次いで設立され、18〜23年にすべて解散している。このうち1社の本店は江戸川区にある元職員の自宅だった。

 ある元請け業者は読売新聞の取材に対し、「(3社のうちの)1社を大学側から紹介された。監理業務はやってもらったと考えている」と話した。一方、至誠会幹部の一人は「元請けへの発注額は相場より2〜3割、中には5割高いものもあった」と話した。

 東京女子医大の代理人弁護士は11日、「元請け5社との入札及び取引の記録の精査を進めている」としたうえで、「発注の経緯及び発注額に不審な点は見つかっていない。(元職員らが)関与していることが事実であれば、誠に遺憾で、厳正な対応をすべきだと受け止めている」と回答した。業者側への聞き取り調査も行うという。

 元職員は23年6月に大学を退職しており、同12月、取材に対し「何もお答えすることはない」と話した。3社の代表取締役は回答していない。

 岩本氏は1973年に東京女子医大を卒業。同クリニックを経営する傍ら、2014年に同大の副理事長、19年に理事長に就任した。13年6月〜昨年4月には至誠会の代表理事会長も務めており、警視庁は一連の問題の岩本氏の関与も調べる。

 大学運営に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授(監査論)は、「学校法人の関係者が学校関連事業に関わる場合、法人の理事や監事が業務内容を監督する必要がある。本件は工事発注代金の一部が大学職員側に流れた疑いがあるもので、大学側は契約経緯などを調べるべきだ」と指摘している。

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