「勇気を持って証言した娘を誇りに」、被害女児出廷…児童わいせつ公判
読売新聞オンライン 2024/6/20(木) 13:03配信
勤務先の小学校で女子児童の体を触ったとして、福井県坂井市立小理科教諭の男(60)が強制わいせつ罪に問われた福井地裁の公判。被害を受けた女児が証人として出廷し、当時の様子を証言した。事前に捜査機関や児童相談所が連携して被害を聞き取る「司法面接」が証拠として採用されなかったためで、女児はつらい記憶を複数回、家族以外に話さざるを得なかった。専門家は「児童の精神的負担が増すことのないよう配慮を」と求める。(荒田憲助、北條七彩)
男は17日、福井地裁から懲役1年2月の実刑判決を受け、即日控訴した。地裁判決では、男が昨年1〜5月頃に2回、勤務先の小学校で女児の服の上から胸などを触ったわいせつ行為を認定。判決を見届けた女児の父親は同日、読売新聞の取材に「勇気を持って証言した娘を誇りに思う。男を許せないという思いは変わることがない」と力を込めた。
女児は公判前に司法面接を受けていた。
司法面接は警察や検察、児童相談所が連携し、代表者が原則1回で子どもから被害状況などを聞き取る。犯罪被害のつらい記憶を思い出す精神的な負担を軽減するため、2015年から本格導入された。記憶が減退しやすく、暗示や誘導の影響も受けやすいとされる子どもから正しい情報を聞き取ることも狙いだ。
公判で証拠として採用されるよう、内容を録画するほか、専門家の研修を受けた検察官らが「何があったのか教えて」「それからどうなったの」と子どもの自由な説明を促す。
検察側は公判で、女児の司法面接の結果を証拠として提出した。しかし、無罪を主張していた弁護側は証拠採用に同意しなかった。犯行を裏付ける有力な物証はなく、男の有罪を立証するため、女児が法廷で証言する必要に迫られた。
「頑張って話をする。つらい気持ちになる子が増えてほしくないから」
出廷が求められていた昨年12月、女児は父親に伝えた。法廷で傍聴席の市民らの注目を集める中、初対面の裁判官らに被害を説明せねばならない。父親は「想像するだけでかわいそうで、本当は証言なんてさせたくなかった。娘の強さに励まされた。娘を支えて最後まで戦うと決意した」と振り返る。
女児は昨年12月6日に出廷。地裁は刑事訴訟法に基づき、法廷と女児のいる別室をオンラインでつなぐ「ビデオリンク方式」を採用した。「直前まで緊張で顔がこわばっていた」(父親)という女児は、うそをつかないとの宣誓書を読み上げる途中で言葉を詰まらせた。一時休廷の後も検察側に「先生にどこを触られましたか」と尋ねられて約30秒沈黙するなど、言葉を紡ぐのに苦しむ場面が目立った。
それでも、画面に映る裁判官と検察官、弁護士を前に、「どこを触られたか」「両手で触られたのか」などと繰り返される質問や確認に最後まで応じた。女児は帰宅後、達成感に満ちた表情を見せたという。
一方、男は公判で「事実ではない」と無罪を主張。弁護側は「証言に疑問の余地がある」とした。女児や家族への謝罪は一切なく、父親は「傍聴席から(男に)つかみかかりそうになるのをこらえるのに必死だった」と明かす。
今月17日の地裁判決では、「女児の証言は信用でき、わいせつの事実が認められる」とした。父親は傍聴席の最前列で耳を傾け、何度も手で目元を拭った。判決直後、「娘の話を信じてくれたことが、何よりもうれしい。娘の頑張りが実を結び、これ以上、同様の被害者が生まれないことを心から願う」と柔らかい笑顔を浮かべ、続けた。「判決に満足している。証言をしたのに有罪判決が出なかったら、娘は社会や大人を信じられなくなってしまう」
司法面接を生かせなかった今回の公判。捜査関係者によると、司法面接で話してくれた子どもが、法廷で証言する可能性があることにためらい、容疑者を嫌疑不十分で不起訴とした事例があるという。この関係者は「被害者の精神的負担を軽くすることが、真相解明でも重要だ」と訴える。
司法面接について研究する金沢大の上宮愛講師(心理学)は「弁護側が戦略的に子どもを法廷で証言させたとしても、憲法で反対尋問をする権利が認められている以上、仕方がない」と説明する。
その上で、「子どもがトラウマ(心の傷)に触れる証言を2回以上した場合、抑うつや不安感からの回復が難しいと示す研究が複数ある」と指摘。「公判では適切な質問に努め、適度に休憩を挟むなどの配慮が求められる。反対尋問のあり方の議論も必要だ」とする。
↓実刑判決即日控訴
強制わいせつの罪に問われたのは、福井市木田3丁目の教諭・見附史教被告(60)です。判決文によりますと見附被告は2023年1月から5月にかけて、勤務先の坂井市内の小学校で1人の女子児童に対し、服の上から胸や下腹部を触るわいせつな行為をしたとされています。
学校側の調査では見附被告による性被害を訴えた児童は11人にのぼっています。また、福井テレビの取材では、見附被告から小学生時代に性被害を受けたという女性が、カメラの前で証言してくれました。この裁判では、つらい体験をしながらも1人の女子児童が最後まで勇気を持って訴えたことが実刑判決につながりました。
見附被告の弁護人は控訴したといいます。被告本人はどんな気持ちで判決を受け止めているのでしょうか
↓求刑2年
↓起訴内容を再度否定
↓公判で被害児童の父親と校長が証言
↓初公判 無罪主張
↓3度目の逮捕
↓送検
↓2度目の逮捕
↓拘留10日間延長
↓1度目の逮捕