松本の柔道教室小6重体事故訴訟:元指導員強制起訴 「真相究明、再発防止を」 危険性の予見争点に /長野
毎日新聞 2013年5月22日(水)12時38分配信
◇検察官役の弁護士「十分証明できる」
県内初の強制起訴となった松本市の柔道事故。検察官役の徳竹初男弁護士と青木寛文弁護士は21日、長野市内で記者会見し、「全力で有罪立証に努めたい。私たちの主張が認められると信じている」と力を込めた。
公判では、元指導員の小島武鎮被告(40)が危険性を予見できたかが最大の争点になるとみられる。今年3月、長野検察審査会は起訴議決の理由の中で「頭を直接打たなくても、小中高生は脳が揺れやすく頭蓋(ずがい)内に損傷が起こりやすい。柔道整復師である小島被告は、一般の人より医学的知識があり、危険性を予見できた」と指摘した。
これについて、徳竹弁護士は「十分証明できると思う」と自信をのぞかせた。小島被告と被害者の沢田武蔵さん(16)の当時の身長差が約35センチ、体重差が約40キロあったことや、沢田さんの受け身の技術が未熟だった点などを挙げ、「そもそも、そういう状況で大人が子供を投げればどうなるか。知らなかったで許されるのか」と述べた。
一方、小島被告の弁護人は、脳が揺れて頭蓋内に損傷が起こるという医学的知識は「当時、あまり知られていなかった」とし、事故は予見困難だったとして無罪を主張する構えだ。【巽賢司】
◇強制起訴の経緯
2008年5月、松本市の柔道教室で当時11歳だった沢田武蔵さんが元指導員の小島武鎮被告に投げられ、急性硬膜下血腫の傷害を負い、重い意識障害が残った。
松本署は10年9月、小島被告を業務上過失傷害容疑で長野地検に書類送検したが、同地検は12年4月、被告を容疑不十分で不起訴処分とした。沢田さんの両親は処分を不服として12年5月、長野検察審査会に審査を申し立て、同検審は同7月、「起訴相当」と議決。同地検は再捜査の結果、同12月に再び不起訴処分とし、同検審は今年3月、再度、「起訴すべきだ」と議決した。
沢田さんと両親が小島被告らに損害賠償を求めた民事訴訟は11年9月、東京高裁で小島被告側が2億8000万円を支払うことで和解が成立している。
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■ことば
◇強制起訴
検察が不起訴にした事件でも、検察審査会が起訴すべきだと2回議決すれば、裁判所指定の弁護士が検察官役として強制的に起訴する制度。国民の司法参加の一環として2009年5月に裁判員制度と共に導入された。被害者らの申し立てを受け、8人以上の賛成で「起訴相当」と議決すると検察が再捜査する。再び不起訴になっても、検審が再審査し、2回目の「起訴相当」を議決すれば、強制起訴となる。検審は、くじで選ばれた市民11人で構成する。
5月22日朝刊
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松本の柔道教室小6重体事故訴訟:元指導員強制起訴 「やっとここまでこられた」両親が会見 /長野
毎日新聞 2013年5月22日(水)12時38分配信
小島武鎮被告の強制起訴を受け、沢田武蔵さんの父博紀さん(41)と母佳子さん(42)が21日、松本市役所で記者会見した。柔道事故が相次ぎ、社会問題化していることから、博紀さんは「真相究明と(柔道事故の)再発防止のためにどうすべきか判断してもらいたい」と述べた。
検察審査会への申し立てなどを経て、事故から約5年が経過した。佳子さんは「『謝ってもらいたい』という気持ちから全ては始まった。強制起訴になり、やっとここまでこられたという気持ち」と感慨深げに振り返った。
武蔵さんは全身まひが治っていない。佳子さんは「事故が少なくなってほしい。裁判がそのための機会になればと思う」と期待を口にした。【福富智】
5月22日朝刊