メイドとして働いていた13歳少女、チョコレート盗んで殺されたか パキスタンで怒り噴出

パキスタンで、メイド(家事労働者)として働いていた13歳の少女を殺害したとして、夫婦が逮捕された。少女はチョコレートを盗んだとして、暴力をふるわれたとみられている。この事件を受けパキスタンでは、子どもの労働や、家事労働者に対する虐待をめぐる議論が再燃している。 警察などによると、イクラさんという名のこの少女は、複数のけがが原因で、北東部パンジャブ州ラワルピンディの病院で12日に死亡した。初期の調べでは、折檻(せっかん)を受けたとみられている。 父親のサナ・ウラさん(45)によると、イクラさんは8歳からメイドとして働き、2年前からは、8人の子どもがいる今回の容疑者夫妻のもとで働いていた。月給は約23ポンド(約4400円)だったという。 警察は、イクラさんが普段から虐待を受けていた証拠もあると説明。けがの全容を把握するため、検視を進めているとしている。 BBCが入手した写真と動画からは、イクラさんが両足と両腕を何カ所か骨折し、頭部に重傷を負っていたことがわかる。 ■「金持ちが貧乏人を使い捨てできるシステム」 この事件は多くの人々の怒りを呼び、「(イクラに正義を)」というハッシュタグをつけたソーシャルメディアへの投稿は、何万回も閲覧されている。 活動家のシェール・バノさんは、「私の心は血の涙を流している。どれだけの人が(中略)毎日、ささいな仕事のために、自分が暮らす家で暴力にさらされているのか」、「貧しい人たちはいつまで、自分たちの娘をこうして墓の中へと送り続けるのか」とXで書いた。 「彼女はチョコレートをめぐって死んだのか?」と、殺された理由とされる事柄があまりに小さいことを嘆く投稿もある。 「これは単なる犯罪ではない。金持ちが貧乏人を使い捨てできるシステムを反映したものだ」と訴える書き込みもみられる。 こうした事件は世論の怒りを集める一方で、裁判を経ずに解決されることが多く、容疑者が訴追されることはまれだ。 2018年には、10歳だったメイドの少女を折檻した罪で、裁判官とその妻に禁錮3年の刑が言い渡された。この事件では、ほうきをなくしたために殴られたとする少女の話などが大きく報じられ、国中で怒りの声が噴出した。だが、夫妻の刑期はその後、1年に短縮された パキスタンの法律では、いくつかの重大犯罪において、被害者やその家族が容疑者を許すことができる。被害者からの「許し」は主に金銭が動機になっていて、容疑者側が被害者側に金銭を支払うことは同国では違法ではないという。 ■国内で子ども330万人が労働 パキスタンでは、子どもの労働に関する法律が州によって異なる。パンジャブ州では、15歳未満の子どもを家事労働者として雇うことが禁じられている。 しかし、イクラさんの父親で農業労働者のサナ・ウラさんは、借金があったため、イクラさんを働きに出したという。 イクラさんが息を引き取ったのは、警察から連絡を受けたサナ・ウラさんが病院に駆けつけ、ベッドに意識不明で横たわっている姿を目にした数分後だったという。 国連児童基金(ユニセフ)によると、パキスタンでは約330万人の子どもが働いている。国際労働機関(ILO)は、パキスタンの家事労働者は約850万人で、その大多数は成人女性と少女だとしている。 (英語記事 'Died for stealing chocolate': Pakistan anger over death of child maid)

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