集団暴行事件 体育会離れで指導に甘さ “京大の教訓”生かされず

集団暴行事件 体育会離れで指導に甘さ “京大の教訓”生かされず
2009年6月17日23時25分配信 産経新聞

 京都教育大学の体育会運動部の男子学生6人がコンパで女子学生に乱暴し集団準強姦(ごうかん)容疑で逮捕された事件。今回と同様の事件は平成17年にも起きていた。京都大アメリカンフットボール元部員による事件でも主犯格の元部員は「合意のうえのこと」と主張したが、最終的に懲役刑が確定した。なぜこのような事件が繰り返されるのか。専門家は体育会に入部する学生が減少し、部員確保のために指導が甘くなっている現状などを指摘。体育会OBらも「部活動を通して規律やモラルが養われなくなった」と危機感を募らせている。

 ■体育会離れ

 「きつい練習を嫌って体育会運動部は学生に敬遠されている。それとともに部員の連帯感が薄れ、私生活まで律しなくなった」。龍谷大の小椋(こむく)博教授(スポーツ社会学)はこう指摘する。

 最近では、スポーツを楽しむサークルに入る学生が増加する一方、体育会では入部しても短期間でやめてしまう学生が多いという。

 京教大でも10年前に比べ、学生数の減少とともに体育会の部員数も減少しており、多くの部が部員確保に悩んでいるという。

 京大での事件は、体育会アメフト部の元部員3人が女子学生2人に焼酎を一気飲みさせ、泥酔した際に乱暴した。いずれも体育会の学生で、飲み会の席で起きたことなど、京教大の事件と構図が似ている。

 体育会離れを食い止めるためには、私生活まで厳しく指導することを避ける傾向があり、京大アメフト部員の事件発覚直後、当時の監督は「最近は甘くなっていた」と漏らしていた。

 ■変わる体育会気質

 京教大のある男子学生(19)は「体育会系の飲み会では、(一気飲みなど)今回の事件のような雰囲気になると聞いていた」と話し、今回の事件が極めて特殊な状況下で起きたわけではないことをうかがわせた。

 東京都内の私大で学生時代に体育会アメフト部だった男性会社員(33)は「体育会の学生は日ごろの練習が厳しいだけに、遊びになると、はめをはずしてしまうことがあった」と振り返る。

 ただ、かつては部員同士で歯止めをかけることができる関係だったと強調する。先輩後輩の上下関係が厳しく、「軍隊的」と批判される面もあったが、上級生がにらみを利かせ、だれかが暴走したとしても必ず止めることができたという。「厳しさの中で自然と規律やモラルが養われていったが、仲良しグループのようになった今は難しいのではないか」と憂慮する。

 ■集団心理

 体育会離れが進む一方で、アメフトや野球などの部に所属する男子学生は「人気スポーツ選手」として、学内外の女子学生らから注目される存在。中にはファンのような女性もいて、コンパに誘えばすすんで参加する女子学生は多い。元アメフト部員の男性会社員は「望んでコンパにきた女子学生には少々のことなら許されるという感覚になる」という。

 京大事件の裁判は、主犯格の元部員が「合意の上だった」と主張。判決でも「女子学生の性的言動が犯行を誘発した」とし、女子学生側にも苦言を呈したが、懲役4年6月の大阪高裁判決が確定した。元部員の身勝手な認識の甘さが断罪された。

 帝塚山学院大の小田晋教授(精神医学)は「複数の男女がいる中で、女性はまさか乱暴されるとは思わないために、安易に男を錯覚させるような性的な言動をしてしまう面がある」とした上で、「集団心理と人気のある体育会学生の優越感が交錯し、許される行為と錯覚を起こしやすい」と分析している。

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