トルコ・イスタンブール市長逮捕から1週間 抗議デモで1900人拘束、野党一歩も引かず

トルコで最大都市イスタンブールのイマモール市長(53)が汚職容疑で逮捕され、30日で1週間になる。国内では抗議デモが相次ぎ1900人近くが一時拘束された。長く政界に君臨し、強権に傾くエルドアン大統領(71)の最大の政敵で、所属する最大野党の共和人民党(CHP)は拘束されたイマモール氏を2028年の次期大統領選の候補に選出するなど、一方も引かない姿勢だ。 イマモール氏は知名度も高く、最近の世論調査では支持率でエルドアン氏を上回るケースもあり、逮捕は政権の差し金ではないかとの見方も出た。トゥンチュ法相は「法律違反の証拠があれば、政治家であっても逮捕する」と述べ、政治とは無関係だと強調した。 エルドアン氏はイスラム教の価値観を重視する与党、公正発展党(AKP)の党首で、軍など政府機関内部で世俗主義の幹部らの粛清を行ってきた。批判的なメディアも姿を消して9割が政権寄りとなり、27日には英BBC放送の特派員が国外退去処分となった。 逮捕に政治的狙いがあるとの見方が広がったのは、イマモール氏の拘束と大統領選出馬を阻むかのような動きがほぼ同時に起きたことも一因だ。イマモール氏は23日の逮捕に先立って19日に身柄を拘束されたが、出身校のイスタンブール大学は18日に同氏の学位を剝奪していた。トルコの法規では大学卒でないと大統領にはなれない。 03年に首相、14年に大統領に就任したエルドアン氏は、大統領に強大な権限が付与された17年の憲法改正をへて、18年と23年の大統領選でも勝利した。大統領の任期は2期までで、続投するには28年の任期満了を待たず大統領選を前倒しして2期目の任期を全うしていないと主張するか、再び憲法を改正する必要がある。 抗議デモへの政権側の対応や、エルドアン氏の大統領続投につながる動きが表れるかが今後の動向を占う試金石となる。 ただ、エルドアン体制の長期化で、地方に多いイスラム教に熱心な国民と、都市部に多い世俗化した人々の分断は深まっている。今回のデモはここ10年で最大規模に膨らみ、体制への批判が増えていることをうかがわせる。 米誌フォーリン・ポリシー(電子版)は25日、エルドアン政権が多少強引に「政敵」を排除したとしても、トランプ米政権は強く批判したりしないと踏んでいる可能性があると指摘した。また、エルドアン氏が権力の座に居座れば野党勢力への弾圧を強化し、権力を明け渡したとしても影響力を発揮して次期体制を脅かすとし、どちらにしてもトルコは今後、困難な事態に陥るとの見方を示した。(カイロ 佐藤貴生)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする