みなさんは「足痕跡鑑定官」という仕事をご存じでしょうか?警察の鑑識課に所属し、現場に残された証拠から犯人を特定する捜査になくてはならない存在です。今回は県警の鑑定官としてこれまで捜査に尽力してきた男性を取材しました。 前刑事部長 安里準さん「趣味を探しながら新しい人生をスタートさせようと思います」 前警察学校長 仲本貴さん「決してひとりの力では(ここまでくるのは)無理だったかなと思いますので職場と家族に感謝したいと思います」Q今後したいことは?「富士山に登ろうかなと思います」 きのう県警本部で辞令交付式が行われ、長年県警に勤務してきた55人が退職の日を迎えました。そのうちのひとり山内和清(やまうち・かずきよ)さん。これまで足痕跡鑑定官(そっこんせきかんていかん)として人知れず様々な事件解決に携わってきました。 「足痕跡鑑定官」とは、県警の鑑識課に所属し、日々県内で起こる事件の現場で見つかった足跡などを調べて裁判などでも使われる鑑定書を作成する仕事です。高い技術が求められ、県警には現在2人しかいません。山内さんはそのうちのひとりとして、これまでに何度も犯人逮捕に繋がる証拠を見つけ出してきました。 県警 足痕跡鑑定官 山内和清さん「現場から収集された足跡から履物の名称を判明させたり、あるいは犯人の靴を確認したりですね」「その履物にしか存在しない共通する特徴点を判断できるかというのが非常にポイントとなってきます」 人のはいている靴には履き方や歩き方などで特徴が出てくると山内さんは語ります。大切なのは小さな変化も見逃さないよう何度も確認し、妥協せず徹底した鑑定をすることだといいます。 県警 足痕跡鑑定官 山内和清さん「鑑定となると細かい作業がつきものになります。私、家族からもよく言われるんですけども細かくて面倒くさい性格が今の仕事に合ってるような感じがしましたね」 現在、県警の足痕跡鑑定において右に出るものはいないと言われている山内さんですが、元々は警察職員ではなく20代の頃には大阪でシステムエンジニアをしていました。 その後、沖縄に戻り人を守る仕事を志して30歳から警察職員として県警で働き始めます。2012年に鑑識課に配属されると5年間の現場経験や研修などを経て「足痕跡鑑定官」に指定されました。年間でみる足跡は5000にものぼり、これまでにおよそ6万件あまりを鑑定しています。 最も印象に残っている事件が県内の無人店舗などを狙った連続窃盗事件です。証拠がほとんどなく、逮捕された男も無罪を主張していました。そうしたなか裁判で捜査機関側が切り札として出したのが山内さんの足痕跡鑑定でした。 県警 足痕跡鑑定官 山内和清さん「自信を持って作成した鑑定書ではあるんですけども、やっぱり(法廷の)証言台に立って宣誓書を読み上げるところから噛んでしまってですね、やっぱりかなり緊張したというのが記憶に残っております」 証言台に立って分かりやすいよう丁寧に説明を尽くした結果、自身の鑑定が証拠として認められ、裁判所が被告の男に有罪判決を下しました。 県警 足痕跡鑑定官 山内和清さん「ほっとしました。足跡鑑定は補助的な証拠として使われる場合がほとんど。最終的な証拠として活用されるっていうのはほとんど多くありませんが裁判でこの足跡鑑定が認められたことは、自分がやってきたことに間違いはなかったのかなと感じた裁判でもありましたね」 山内さんはきのう30年間勤め上げた県警を定年退職しました。後輩たちからのサプライズも! 後輩の足痕跡鑑定官 新垣大さん「足跡の鑑定をするにあたって2人でいろいろ話しながらいろんな事件を解決するにあたって手助けできたかなという、ほんとうに一つひとつの思い出がこみあげてきてグッとくるものがあった」「山内さんに認めてもらうことが僕の一番の目標かなと思っています」 県警 足痕跡鑑定官 山内和清さん「できる限り培ってきた経験を後輩に伝えていければと思いますので、私生活で孫もいるので孫の成長を楽しみながら後輩の育成に力を入れればと考えています」 県警で再任用が決まっているという山内さんは、これからも足痕跡鑑定で捜査をサポートしながら未来の沖縄のために次の世代を育てていきます。